準大手ゼネコンの前田建設工業(東京)が仙台市中心部で施工したマンションに耐震上の欠陥が多数見つかった問題で、前田が管理組合に建物全体の調査を文書で約束したにもかかわらず、調査の求めに応じていないことが、河北新報の取材で分かった。組合は債務不履行に当たるとして裁判を起こす構えだ。
前田は2022年9月、東北支店の支店長名で組合に「耐震(構造)スリットの不具合について」と題する文書を出した。
前田は文書に「建物全体の耐震スリットの有無、配置状況の調査を実施させて頂きます」「調査によって確認申請と現状の違いを明確にいたします」「調査にかかる費用は確認書を締結した上で、全額当社にて負担いたします」と明記していた。
ところが、前田は23年5月17日に東北支店の副支店長名の文書で「(自社の現地確認で)耐震スリットがないことが確認されなかった」「住民の皆様方へのご迷惑も回避できる」「民法上の不法行為・手抜き工事も見当たらなかった」といった理由を挙げ、「耐震スリットの調査は実施しないことと致しました」と通知した。
管理組合の依頼で調査会社が24年1~3月にかけ、建物全体の4分の1に当たる112カ所で構造スリットを調査したところ、14カ所で不正施工の疑いが確認された。前田が14カ所を再調査し、2カ所にスリットがないことが判明し、8カ所で異常が見つかった。
前田は河北新報の取材に「最初から全体調査ではなく、合理的な計画に基づき調査を実施していく旨の見解を説明した。組合の調査で不具合を明確に示した場合は、真摯(しんし)に対応する」と回答した。