愛知県警の剣道特別訓練員(特練員)の間で広がっている新型コロナウイルスの感染について、県は7日「クラスター(感染者集団)」と認定した。感染拡大を招いた背景には、換気が不十分な武道場に、複数の人が集まる剣道特有の「3密(密閉、密集、密接)」が影響しているとみられる。全日本剣道連盟(東京都千代田区)も緊急声明を出し、人との稽古(けいこ)の自粛を呼びかけている。
剣道の対人稽古は、お互いが正対した状態で行われるのが基本。密閉された武道場に複数人が集まっているケースが多く、かけ声で飛沫(ひまつ)が生じ、感染のリスクが高いとされている。剣道連盟の青木孝さん(63)は「稽古中、顔と顔が30センチくらいに近づくこともある。もっとも飛沫感染しやすいスポーツ」と指摘する。
剣道特練員とは、指導者を目指す剣道の専門集団。愛知県警では、全国大会に出場する20〜30代の強化選手のほか、剣道を教える指導員も含めて22人で構成されている。稽古は「訓練」として業務で行っていた。
県警によると、3月下旬に熱や倦怠(けんたい)感などの症状が出た特練員が相次いだが、いずれも医師からは「新型コロナの可能性は低い」「肺炎がないので風邪だろう」などと診断され、欠勤者数も通常の範囲だと判断。訓練を続けていたという。
ところが、3月31日に体調不良による欠勤の申し出が7人と急増したため、全面的に訓練を中止した。4月1日に感染確認された20代と30代の男性機動隊員2人を皮切りに次々と陽性が判明し、7日現在で男女計18人の特練員の陽性を確認。特練員と一緒に稽古に参加していた男子大学生2人も感染したほか、特練員の家族や知人ら9人の陽性が判明しており、感染は拡大している。
元々の感染経路は不明。特練員らと接触した可能性がある警察官100人以上が自宅待機になっている。業務や捜査への影響は今のところないとしているが、県警幹部は「剣道や柔道の訓練は警察官の日常の一部。(クラスター発生を)重く受け止め、特練員以外への感染拡大を防ぎたい」と話した。【ガン・クリスティーナ、佐久間一輝】