労働者不足で手配師暗躍 NPOかたり人集め 信用度隠れみのに

東日本大震災の復旧・復興事業に絡み、NPO法人を利用して労働者を集める不審な動きが相次いでいる。法人を名乗って路上で声を掛けたり、実在する法人に協力を求めたりする手口だ。関係者は「多くの正規のNPO法人が復旧・復興に貢献している。信用度を高めるため悪用しているのではないか」と懸念する。(「復興の陰で」取材班)
 2月上旬、JR仙台駅。仕事をあっせんする「手配師」の実態を取材していると、黒の帽子をかぶり、革のコートを着た男が「仕事はしているのか」と声を掛けてきた。
 自称68歳。「仙台市青葉区二日町でNPO法人を営んでいる」と言う。
 法人名や事業内容は明かさず「四つか五つの建設業者から人材派遣を頼まれている」と説明。年齢と運転免許の有無を尋ねた上で「解体の仕事なら1日運転して1万円出せる。困ったら連絡して」と持ち掛けてきた。
 男が語った住所を頼りに、青葉区二日町を拠点とするNPO法人に話を聞いた。同法人は福祉関係で震災前から活動しているという。担当者は、男とは無関係であることを強調し「人材派遣の依頼はない」と話した。
 別の福祉関係のNPO法人(仙台市)は2011年夏、不審な電話を受けた。素性の分からない団体だった。
 「がれき撤去のため、人を集めてくれないか」
 「そういうあっせんはしていない」
 「そうですか」
 団体は一方的に電話を切った。
 このNPO法人は震災後、事務所で2人組の男の訪問も受けた。人集めを頼まれ、断った。
 複数のNPO法人関係者によると、法人をかたる詐欺的行為は震災前から架空請求や高額商品の売買などで確認されていた。労働者を集める動きは震災に乗じた新たな手口とみられる。
 NPO法人関係者は「建設業界では労働者確保に暴力団が介在することはあった。暴力団に対する警察の取り締まりが厳しくなり、NPO法人が新たな標的になっている」と指摘する。
 別の関係者は「震災後、えたいの知れないNPO法人が現れている。路上生活者らを集め、施設に入れて生活保護費を搾取する『貧困ビジネス』に乗り出す動きも聞く」と警戒している。

タイトルとURLをコピーしました