ソフトバンクが、インターネット動画配信サービス「Ustream(ユーストリーム)」を多用している。同社は1月に米ユーストリームに18億円を出資。5月に日本語版サイトを立ち上げ、18日には携帯端末の夏モデル発表会を生中継した。
原則無料の動画サイトは、本家の米ユーチューブの1日の視聴が20億回を突破。国内でもニワンゴが運営する「ニコニコ動画」が、広告収入の増加などで2010年1~3月期に黒字化するなど躍進しており、既存の放送メディアには大きな脅威となってきた。
ユーストリームは、07年3月に一般向けがスタートした動画共有サービス。元々は戦争中にイラクに派兵された友人たちのために実家の家族とのコミュニケーションツールとして生まれたという。パソコンだけでなく、高機能端末のスマートフォンで手軽に視聴できるほか、「Twitter(ツイッター)」などとも連動し、視聴者が参加できるのも特徴。
世界で月間5000万人以上が利用し、米国ではオバマ大統領が選挙時に活用したことで知られる。
ソフトバンクは今年1月にユーストリームに約2000万ドル(約18億円)を出資し、同社株13・7%を取得。さらに11年7月までに追加出資し、出資比率を30%強まで高め、グループの傘下に収める方針だ。
「ユーストリームは、誰もが映像を生放送でき、放送局になれる画期的なものだ」
ソフトバンクの孫正義社長は、出資の意義をこう強調。自ら情報を発信するメディア企業への飛躍という新たな“野望”を鮮明にしている。
出資を受け、同社は本社内に映像編集スタジオを開設するなど日本市場での本格事業展開に向けて準備に着手。2月には、決算発表の模様を生中継。さらに、5月14日には、総務省「光の道」構想をテーマに、孫社長の主張に反論するジャーナリストの佐々木俊尚氏との5時間にわたる対談を放映。“男泣き”して、話題を集めた。
18日の夏モデル発表会でも、孫社長は「ユーストリームとツイッターを組み合わせた新製品の発表は世界でも初めてだ」と胸を張った。
動画サイトでは、米ユーチューブが、1日の視聴が米3大ネットワークの倍近い20億回を突破したと発表したばかり。ニコニコ動画も、広告収入が好調だ。
動画サイトの躍進は、既存のメディアにとって広告出稿が流出するだけでなく、ソフトバンクのような大口の広告主が自ら情報を発信する動きが広がれば、大打撃を受けるのは必至だ。