地下や頑丈な建物ってどこよ!/戸惑い広がる青森県内 「住民任せの避難」露呈
北朝鮮が弾道ミサイルを発射した29日、緊張が一時走った青森県内では、「どこに逃げればいいのか」と戸惑った住民も少なくない。政府は、地下や頑丈な建物への避難を呼び掛けるが、県内には該当する場所が少ないのが現状だ。
ミサイル発射から到達予想までの時間も短く、県内の市町村は「現時点では一人一人の行動に委ねるしかない」と対応の限界を指摘。住民への避難誘導の在り方など多くの課題が浮かんだ。
県防災危機管理課によると、国民保護法に基づく県内の避難施設として、建物1495カ所、公園などの屋外368カ所の計1863カ所を指定している。このうちコンクリート造りの建物は683カ所。はっきりとした指定基準はないが、地震などの避難場所と同様に集会所やホールが多い。
避難場所は国や県のホームページなどで公表しているが「ミサイルの場合、逃げるいとまがなく、青森県には地下が少ない事情もあり、身を守る行動が優先される」(同課担当者)との理由で広く周知されていない。
避難場所は果たして、ミサイルに耐えうるのか。県が指定する避難場所が36カ所ある外ケ浜町。ただ、木造の建物が多く、町担当者は「避難場所の確保が今後の課題」と話す。西目屋村の担当者も「村には頑丈な建物や地下はほとんどない。公民館や学校の体育館が避難施設になっているが、窓ガラスによる被害も懸念される」と頭を抱える。
ミサイル発射から到達までの時間が短いことに加え、避難場所に向かうために屋外に出て被災することなどを懸念する市町村も多い。
むつ市防災安全課の佐藤孝悦課長は「限られた時間の中で、それぞれが身の安全を確保する行動を取っていただきたい」、青森市危機管理課の廣津明男課長は「避難場所については、たまたま近くを通りかかった人が使用する形になるだろう」と説明する。
今回のミサイル発射は、「有事」が間近にあることを突きつけた。
八戸市は住民避難を安全に進めるための「ミサイル対応訓練」を来年度早々に市民を交えて実施する方針だったが、本年度中への前倒しを検討する。市防災危機管理課の担当者は「市民が避難について不安感を抱いていることが、課題として浮かんだ。訓練を通じ、市民を安全な場所にどう誘導するかを含め検討し、不安の軽減に努めたい」と話す。
三沢市は、ミサイル発射情報を聞いた市民が市役所や小中学校に避難してきたという情報を受け、発射の際、管理者のいる公共施設については、避難者が来たら中に入れるよう対応することを申し合わせた。
青森中央学院大学大学院の大泉光一教授(危機管理論)は「今回の発射は、Jアラートが安全な場所への避難を呼び掛けたマニュアル的な対応が、いかにナンセンスであったか-ということを表した」と指摘、実効性を伴う、柔軟な対策の必要性を訴える。
さらに「青森県の場合、具体的に『ここにいれば助かる』という場所はない。有効なのは地下シェルターだ。今後、ビルやマンション、ホテルなどには、地下壕(ごう)として使える空間を備えることを、県が条例を作って義務付ける。国全体でやることは難しい。米軍基地や原発などを抱え、標的にされやすい青森県が危機意識を持って推進するべきだ」と提言した。
東奥日報社