【ソウル=依田和彩】北朝鮮が27日夜に打ち上げたのは、米韓両軍の基地などの監視を目的とする軍事偵察衛星だった可能性がある。日中韓首脳会談の当日に合わせて通告・発射し、北朝鮮情勢について協議した3か国の対話をけん制したとみられる。 【写真】北朝鮮・東倉里の方角から発射され、爆発したように見える飛翔体
北朝鮮は昨年11月、軍事偵察衛星「万里鏡(マンリギョン)1号」を打ち上げ、宇宙軌道への進入に成功した。だが、韓国国防省などによれば、画像の撮影や送信などの偵察活動は、技術的な問題などから行っていないとみられる。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は昨年12月、2024年に3基を追加で発射すると表明した。
通告が日中韓首脳会談の当日になったことについて、韓国・峨山政策研究院の車斗鉉(チャドゥヒョン)首席研究委員は、「韓国と日本が北朝鮮への影響力行使を中国に迫ることを予想し、『そんなことをしても自分たちには通用しない』ということを示そうとした」と分析する。
北朝鮮の偵察衛星を巡っては、ウクライナ侵略を続けるロシアが北朝鮮の武器提供への見返りとして、技術面での支援をしているとの見方が強まっている。
聯合ニュースは26日、韓国政府高官の話として、今回の衛星発射のため、ロシアが北朝鮮に技術者を派遣したと伝えた。技術者らは衛星用ロケットに使われるエンジンの性能が発射に必要な水準を満たしていないと判断。燃焼実験を繰り返したため、韓国などの想定よりも発射時期が遅れたとの分析も伝えた。韓国軍は北朝鮮が4月中にも衛星発射を行うと予測していた。
昨年11月の衛星発射は予告期間の直前だった。米韓両軍は北朝鮮が今回の通告期間中の早期に打ち上げを強行する可能性に備えていた。韓国空軍は北朝鮮の通告を踏まえて27日午後、ステルス戦闘機F35Aなど約20機による「編隊飛行と打撃訓練」を実施した。