映画『アウトレイジ ビヨンド』の大ヒット、TBS『日曜ゴールデンで何やってんだテレビ』でのとんねるず石橋貴明との共演など、超大御所になってもなお走り続ける北野武。そこまで彼を突き動かしているものは何なのか?
その秘密を探るためカルチャーシーンに詳しくインタビュー経験もあるライター柴那典さんに、数ある「北野武」本からの名言をランキング形式で紹介してもらった。
元記事はこちら
「武さんの言葉には、常識へのアンチテーゼ、タブーを乗り越える姿勢と哲学が詰まっています。バイク事故やフライデー襲撃事件など、タレント人生が終わっても不思議じゃないことも乗り越えてきた、人生の深みが感じられるんですね。我々がぼんやり見ている世の中を、全然別の角度からも見れるんだと、武さんが教えてくれるんです。」
【1位】「一所懸命アイディアをひねって、白い目で見られよう。」
『ビートたけしのオールナイトニッポン傑作選!(本人本) 』(オフィス北野/太田出版)
当時の男子学生が聞き狂っていたという『ビートたけしのオールナイトニッポン』の傑作選。伝説の第1回放送で「一所懸命みんなに気に入ってもらって、白い目で見られようという。そういうことですから」と言っています。これが所信表明なわけですね。今の時代だったら絶対に放送できない内容が、この本にはつまっている。31年前のこの所信表明は、文化人としての地位を得た今でもなお変なことをバラエティでやっている、たけしさんの原点でもあるんじゃないかなって思います。
【2位】「快感にはみんな暴力的なものが内在してんだよ。」
『孤独』(北野武/ロッキング・オン:単行本、ソフトバンククリエイティブ:文庫)
武さんを初めてシリアスに取り上げた「余生」「孤独」「時効」の3部作インタビュー集。55歳のときに出版された『孤独』のなかで、暴力について語っています。大衆は暴力的なものを求めている、直接的な暴力が押さえつけられているから、それを開放した人がスターになるという視点を武さんはもっていて、その代表として力道山と長嶋茂雄をあげている。ひっぱたいたり打ってくれたりするということでね。理屈を超えて暴力は快感である、と初めて言葉にしているんです。
【3位】「お前にはその才能がないんだと、親が言ってやるべきなのだ。」
『全思考』(北野武/幻冬舎)
武さんが、生死、教育、関係の問題などいろんなテーマについて語っている本。「教育」については、努力すれば夢はかなうなんて嘘、人間は平等なんかじゃない、駄目なものは駄目だと教えてやらなきゃならないとピシャリ。普通なら語弊があるかな、怒られるかな、と思うことを言ってくれる。常識をひっくり返すところが魅力ですよね。きれいごとに見える言葉や考えに疑問を投げかけてきた、武さんのキャリアに納得した1冊です。
【4位】「俺はまだ、何かに喧嘩を売っている」
『僕は馬鹿になった。―ビートたけし詩集』(ビートたけし/祥伝社)
詩集です。オチはなく、「素」のたけしさんが感じられる作品。この一説は「芸人」という詩からなんですが、湿った演芸場の舞台の自分と、成功した自分の変わらない姿を表している。世界に認められた映画監督でもあるのに今だに変な着ぐるみ着てテレビに出てくる、それって何かに喧嘩を売っているというのも絶対にあるんだろうなって思います。深夜のひとりごとみたいな詩で、どこか寂しさもあるんだけど、それがかっこいいんですよね。
【5位】「映画は、“間”で決まる。これはもう完全にそう。」
『間抜けの構造』(ビートたけし/新潮社)
武さんの新刊で、「間(ま)」について語っている本です。武さんは、「間」というものをすごく大事にしている人。漫才でも、どのタイミングでぼけてどのタイミングでつっこむかをゼロコンマ何秒で考えているし、2時間の映画を作るときも秒レベルで編集しているんです。余計な間を許さない姿勢がすごいなあと。「間」について語ることが、武さんの映画論の根本だし、芸についても語っているということなんですよね。
(ダ・ヴィンチ電子ナビ「○○な本ベスト5」より)