岸田首相が10月中の取りまとめを表明した経済対策の骨子案が判明した。物価高に対応した電気・都市ガス料金やガソリン価格の負担軽減に加え、半導体など重要物資の国内生産を支援する方向性を明記した。物流の停滞が懸念される「2024年問題」への対応策なども打ち出し、国民生活を守りながら、経済の活性化に取り組む姿勢を鮮明にする。 【図表】政府の経済対策のポイント
骨子案では、「物価高が国民生活に大きな影響」を与え、「消費の下押し」を招いているとの危機感を示した。その上で、構造的な賃上げと投資の拡大の流れを「より力強いものとし、『成長と分配の好循環』の実現を加速する」と強調した。
具体的には、▽物価高対策と経済の足場固め▽構造的賃上げと投資拡大の流れの強化▽人口減少を乗り越えるための社会変革▽国民の安全・安心の確保――の4本柱を掲げた。
このうち、物価高対策では、電気・都市ガスとガソリンなどの燃料油を挙げ、「重点的な対策」を講じる方針を示した。現行の補助金制度を年明け以降も延長するかどうかが焦点となる。
新型コロナウイルス禍で停滞した経済は回復基調にあり、この流れを地方にも波及させる必要があるとして、訪日外国人観光客の増加や農林水産品の輸出拡大にも取り組む。
賃上げと投資拡大では、生産性向上などに力を入れる企業向けの補助金に関し、継続的な賃上げを支給要件にすることも検討する。労働者のリスキリング(学び直し)支援や、スタートアップ(新興企業)育成の後押しをする。半導体や蓄電池など重要物資の国内生産を促す取り組みとして、対象企業に新たな減税措置を設けることも想定している。
人口減対策となる社会変革では、自治体業務の効率化を図る「デジタル行財政改革」を推進する考えを示した。長時間労働の是正によってトラック運転手の不足が懸念される24年問題に対応するため、運転手の待遇改善や規制改革が論点となる。
安全・安心を確保する施策に関しては、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を巡る対策や防災・減災、国土強靱(きょうじん)化の推進などを挙げた。
首相はこうした内容に基づき、今週前半に経済対策の柱立てを表明し、閣僚へ取りまとめを指示する予定だ。与党との調整を経て、10月中の策定を目指す。