台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県進出をきっかけに、周辺地域で半導体関連産業の集積が加速している。
一連の経済効果は20兆円に上るとの試算もあり、九州全体が「半導体バブル」に沸いている。
三菱電機は約1000億円を投じ、熊本県菊池市にパワー半導体の製造工場を新設する。ロームは宮崎県国富町に工場を整備する計画で、投資額は3000億円規模。ソニーグループは熊本県合志市、京セラも鹿児島県薩摩川内市、長崎県諫早市で大規模投資の予定だ。
九州経済調査協会は、こうした投資が九州7県と山口、沖縄両県に与える経済効果について10年で計約20兆円とはじく。機械や建設に加え、運輸やサービスなど幅広い産業に波及するという。
国の財政支援以外にも、半導体産業を金融面で支援しようと福岡銀行など九州・沖縄の地方銀行11行は今年1月、連携協定を締結。熊本大や九州大も人材育成のための講座を設けるなど、「半導体熱」の高まりは産官学に広がる。
一方、熊本県ではTSMC工場が大量の地下水をくみ上げることに対する不安のほか、道路渋滞の深刻化など急激な景気の盛り上がりに伴う課題も浮上。県商工会連合会が今年3月に実施したアンケート調査では、「給料上昇が経営を圧迫し、人材確保に支障が出ている」(建設業)などと不満の声が上がった。工場周辺に人口が流出し、「消費が低迷している」(製造業)と切実な訴えも聞かれた。