半導体次世代素材「酸化ガリウム」 基板の量産化加速へ 東北大スタートアップ設立

半導体の次世代素材として注目される酸化ガリウムのウエハー(基板)量産化を目指し、東北大金属材料研究所の吉川彰教授(固体化学)らがスタートアップ企業FOX(仙台市太白区)を設立した。2028年までに量産技術を確立し、生産工場の新設を目指す。

 社長に電子部品大手出身の小野寺晃氏、技術顧問に吉川教授が就任。ベンチャーキャピタル(VC)の出資2億7950万円に加え、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のスタートアップ支援事業から5億円を受けた。

 酸化ガリウムは、電気自動車の電力変換や新幹線のモーター制御を担う「パワー半導体」の素材として期待される。現在広く使われるシリコン(Si)、普及が進むシリコンカーバイド(SiC)などに比べエネルギーの変換効率が良く、消費電力の削減につながるという。

 ウエハーの元となる酸化ガリウム結晶の製造には、高価なイリジウムが必要だった。吉川教授らは22年、イリジウム不要の製造手法を開発。直径2インチの結晶作製に成功しており、今後は標準的な大きさである6インチの結晶作りや、装置のコスト低減に向けた実験を進める。量産化に成功すれば、SiCでは1枚5万~20万円のウエハーを約1万円で生産できると見込む。

 青葉区の東北大片平キャンパスで10月17日にあった記者会見で、小野寺社長は「基盤のコストを低減させ、普及を後押しして省エネルギー、脱炭素社会に貢献したい」とあいさつ。吉川教授は「将来的に東北を含め、全国への工場の展開を目指したい」と語った。

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