就職活動前の学生向けに地元業界の社長らの本音や思いが聞ける講座「センダイシゴト大学」の知名度が徐々に浸透している。卒業後、首都圏に流出する学生の仙台定着を目指す仙台市の取り組みの一環で、毎月第1水曜日に開講する。各回ごとにフードビジネスや観光、デザインといったテーマを設定。社長ら3、4人を招き、各社の仕事や働き方、経営方針など生の情報を紹介する。
(せんだい情報部・高橋公彦)
毎月テーマ設け講座、企業トップら本音も
青葉区の交流拠点「IDOBA(イドバ)」で5月8日にあった本年度の初講義。輸入住宅販売のセルコホーム(青葉区)と広報企画などを手がけるオフィスプランB(同)、ウェブマーケティングや学習塾を展開するエニバ(同)のトップ3人が登壇した。「東京VS仙台」をテーマに、二つの都市で生活して気付いたことや、仙台で働く魅力などを議論した。
大手商社勤務からUターンしたセルコホームの新本考社長は「自分も東京にいたが、子育ての面では仙台に戻ってきて良かった」と断言。「若い時だけでなく、結婚や子育てを含めて50年ぐらいのライフステージを見通して、東京でいいのか一度考えてみてほしい」と語りかけた。
会場には市内外の大学生15人が訪れ、ゲストとの質疑応答に加え、インターンシップ(就業体験)の勧誘や交流タイムも用意された。宮城大2年の菊池優梨さん(19)=宮城野区=は「社長と直接コミュニケーションが取れる貴重な機会。仙台で働く良さが理解できたし、もっと話を聞きたくなった」と感想を述べた。
センダイシゴト大学は昨年7月にスタート。在仙の大学卒業者の約半数が首都圏に流れ、地元企業の慢性的な人手不足に陥る現状に危機感を抱き、市は就職活動の早期化の実態を踏まえて手を打つことにした。
大学生や短大生、専門学校生の全学年、社会人も卒業から5年以内なら申し込める。「どういう人(経営者)と働きたいか」を重視する学生が増えている傾向に基づき、多様な業種の仕事を研究できるトークイベントを中心に据えた。私服で参加でき、気軽に来られるように配慮した。
今年3月までの8回で計29社の経営者らが参加。学生は延べ約120人が来場し、インターンシップにつながる例もあった。市商業・人材支援課の菅原大介課長は「就職活動前の学生に参加を促すことで、地元の企業や経営者を知り、就職先の選択肢に入れてもらえるようにしたい」と話す。
本年度は計9回の予定。次回は5日午後6時半~9時で、テーマは「ウェブ・IT業界」。参加費無料。イベントの申し込みは通信アプリLINE(ライン)の公式アカウントから。