東日本大震災の大津波で店舗と工場が流失した宮城県南三陸町のかまぼこ製造・販売業「及善商店」が登米市の新工場で製造を再開し、13日、記念のセレモニーを行った。及川善祐社長(58)は「販売を軌道に乗せ、必ず地元の南三陸町に帰りたい」と意欲を語った。
登米市迫町佐沼の店舗兼倉庫を借り、約165平方メートルの工場と約80平方メートルの事務所を構えた。8月中旬から工場を稼働し、今月1日から県内の新幹線の駅や道の駅で、笹かまぼこの販売を再開した。
セレモニーには、南三陸町などから約50人が駆け付け、老舗の再起を祝った。出来たての厚焼きの笹かまぼこを頬張ると、思わず「うまい」と声が漏れた。
及善商店は1880(明治13)年創業。経営する店は、南三陸町の通称「おさかな通り」かいわいにある名物店だった。震災前の年間売上高は約1億6000万円あったが、店や工場、在庫商品を津波で失い、損害額は約2億円に上る。12人の社員も全員、解雇した。
再起に当たって、国の緊急雇用制度の震災対応事業を活用し、再雇用と新規採用の合わせて6人を社員として迎えた。資金面では、投資ファンド運営会社(東京)の「復興ファンド」の支援を受け、全国から1000口、1000万円が集まった。南三陸町内にも仮設工場の建設を計画中だ。
及川社長は「店は私で五代目。さまざまなバックアップを受け、もう一度立ち上がって、おいしいかまぼこを届けたい。今後、2年がかりで売り上げを元に戻す」と話した。