南三陸・小野寺さん 自伐型林業の担い手目指し奮闘

宮城県南三陸町の小野寺翔さん(23)が林業の担い手を目指し奮闘している。実践しているのは、山の所有者や地域住民が自ら手入れをし、間伐材で収入を得ながら大樹を育てる「自伐型」だ。「先人が残した山の価値を高めたい」。東日本大震災で打撃を受けた古里の力になろうとUターンし、山に夢を懸ける。

 同町戸倉地区の山林にスギやヒノキを切るチェーンソーの音が響く。小野寺さんが木に刃を入れる角度、木の重心を見極めながら間伐を進める。陽光が差し込む森の中で、「まだまだ修業の身」と汗を拭った。
 小野寺さんは4月、地元の戸倉地区で自伐型林業に取り組む「波伝の森山学校合同会社」に就職した。代表社員の渡辺啓さん(44)と、山主から請け負った17ヘクタールの森林を管理する。
 自伐型林業は、山主や住民が一つの山を長期的に見守るため「山守型」と呼ばれる。チェーンソーと木を運ぶダンプカー、作業道を作るバックホーがあればできる。持続的な森林経営を促す手法として、東北でも関心が高まっている。
 小野寺さんは「昔の人は『将来の資産になれば』との夢を抱いて木を植えたと思う。人が植えた以上は、人が管理しないといけない」と力を込める。
 中学2年の時に町内で被災し、自宅を津波で失った。「あの日を境に2度目の人生が始まったという気持ちになった」。いつかは古里の力になりたい、との思いを抱き続けた。
 高校卒業後、関東の大学に進んだ。就業のきっかけは大学2年の夏、帰省した時の「うちにも山があったよね」という家族との会話だった。
 祖母と戸倉地区にある約10ヘクタールの持ち山に入った。長年放置されていたため木は痩せ細り、下草もまばら。初めて間近で見る山の現状に心が動いた。
 大学を2年で中退し、岐阜県の林業専門学校で2年間学んだ。就職先は在学中に就労体験した波伝の森山学校に迷わず決めた。渡辺さんは「子どもや孫の代に立派な山を残せるようになってほしい」と期待する。
 小野寺さんは将来の独立を視野に入れる。「持ち山から始め、いずれは地元で放置されている山の管理を手掛けたい」。夢の実現に向けて突き進む覚悟だ。

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