南京「哀悼日」 容認できぬ一方的な反日宣伝

一方的な歴史認識の押し付けは、日本国内の反中感情を増幅させるだけで、非生産的だ。到底、容認できない。
 1937年に旧日本軍による南京事件が起きた13日、江蘇省南京の「大虐殺記念館」で追悼行事が行われた。習近平国家主席は演説で、事件で「30万人が殺された」と改めて主張した。
 この数字の否定は許さないと強調し、「侵略の歴史を顧みない態度、美化する言論に断固反対しなければならない」と語った。
 だが、「30万人」は客観的な根拠に乏しい。日本政府は、非戦闘員の殺害の事実は認めつつ、犠牲者数の確定は難しいとする。
 日本では、当時の南京の人口動態などから、「30万人」は実態とかけ離れているとの見方が支配的だ。2010年発表の日中歴史共同研究の報告書で日本側は、「20万人を上限に、4万人、2万人などの推計がある」と指摘した。
 中国が「歴史を 鑑 ( かがみ ) とする」と言うのなら、国際的に信頼できる資料の裏付けのある史実を基に、主張を展開すべきではないか。
 習政権は今年初め、9月3日を「抗日戦争勝利記念日」、12月13日を「国家哀悼日」と定めた。両日の式典を国家行事に格上げしたのは、外交上、日本に対する「歴史カード」とする狙いがある。
 「中華民族の偉大な復興」を目指す習氏には、「愛国」や「反日」を利用し、政権の求心力を高める思惑もあろう。国民や共産党内の対抗勢力に、批判の口実を与えない必要性も感じているはずだ。
 内政上の都合に基づく「反日」であれば、習政権による自発的な修正は当面、期待できない。
 一方、習氏は、「中日両国民は友好を続けねばならない」と語り、「少数の軍国主義者が起こした侵略戦争を理由に、その民族を敵視すべきでない」とも言明した。
 11月の日中首脳会談で生まれた関係修復の機運を重視しているのだろう。成長減速に危機感を抱き、経済面を中心に対日関係の改善を模索しているのは確かだ。習氏は今後も、「圧力」と「友好」を使い分けるに違いない。
 戦後70年の来年は、国際社会で歴史問題に注目が集まる。中国が反日宣伝活動を強めることが懸念される。ロシアとは戦勝記念行事の共催で合意した。韓国にも“共闘”を呼びかけている。
 日本は、不当な宣伝には 毅然 ( きぜん ) とした姿勢で反論すべきだ。戦後の平和国家としての歩みを含め、世界に正しい対日理解を広げる情報発信の努力が欠かせない。

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