単行本出し順調デビュー/保谷伸さん、オイカワマコさん

<仙台を舞台に新連載>
 仙台市出身で、宮城野区に住む女性漫画家の保谷伸さん(26)は、日本デザイナー芸術学院仙台校マンガ科2年の時に「コミックゼノン第1回マンガオーディション」で準グランプリを受賞してデビューした。
 専門学校を卒業直後の2012年春に「キミにともだちができるまで。」の連載を「月刊コミックゼノン」で始めた。人見知りで筆談でしか意思疎通できない小学1年の男の子と、その子の友だち作りを手伝うエリート男子高校生の心温まる物語だ。単行本全5巻が発売され、順調なスタートを切った。
 その次に手掛けた連載「マヤさんの夜ふかし」は、単行本3巻を出版。自称「魔女」と漫画家志望の女性がインターネット電話「スカイプ」でのやりとりを通じ、心を通わせていく。
 独特のゆるさとユーモア、シリアスさを絶妙の加減でミックスさせたタッチで、日常と非日常の境界を描いた。「自分はまだ未熟で固まっていない粘土のような状態。いろんな作風に挑戦して、自分なりのスタイルを練り上げたい」と話す。
 2作には共通点がある。人の弱さや痛みに寄り添う優しさだ。「実生活ではさえない人生を送ってきたので、弱者の立場が分かる方かもしれない。その感性が作品に反映し、読者の共感を得られているのかも」と、とつとつと話す。
 今春、仙台を舞台にした待望の新連載が始まる予定だ。「私にとっては勝負の作品になる。プレッシャーもあるが、ワクワク感が読者に伝われば、うれしい」と意気込む。

<幻想的物語と語り口>
 東松島市在住で仙台市宮城野区に仕事場を構えているオイカワマコさん(26)も、日本デザイナー芸術学院仙台校卒だ。2年の時に「花鬼扉の境目屋さん」でデビューした。
 人間界に住みたい妖怪と、この妖怪に人間らしさを教える男性との心温まる交流を描き、ダイナミックな絵柄と幻想的な物語の創造と語り口が注目を集めた。単行本が4巻発売され、幸先の良いデビューだった。
 次作は単行本全3巻の「グレンデル」。数奇な運命から竜の子の護衛を担った女性剣士の壮絶な生き方を描いた。「専門学校に入って初めてちゃんと漫画を描いたが、授業の一環である出張編集部で来校した編集者と出会い、幸運にもデビューできた」と振り返る。
 デビュー当時は月刊の連載をアシスタントを使わずに描いていた。「とても大変でプロとして連載の締め切りを守る厳しさが身に染みて分かった。漫画家としてしっかりとやっていくためには、心身共に健康じゃないといけないと痛感した」と語る。
 現在、連載している作品はないが、構想は練っている。
 「現実から少し離れたファンタジーやヒーローものを描きたい。ただ、どんな作品を描くにしても根底に優しさがあるものにしたい」と抱負を語る。

仙台圏に住み、活躍する漫画家の作品世界や創作姿勢を紹介する。

◎プロ育成へ的確指導 日本デザイナー芸術学院仙台校

 仙台市若林区新寺3丁目にある日本デザイナー芸術学院仙台校は、漫画家を100人以上も輩出している開校41年の専門学校。広報課の担当者は「東北の専門学校では最多だと思う」と胸を張る。
 現在、活躍中の主な卒業生は保谷伸さんやオイカワマコさんのほか、「そば屋幻庵(あん)」のかどたひろしさんや「ラパス・テーマパーク」の成家慎一郎さん、「渋谷君友の会」の藤枝とおるさん、「ボクラノキセキ」の久米田夏緒さんらがいる。
 同校にはプロの漫画家を目指すマンガ科がある。代表作に「みかん・絵日記」がある宮城県柴田町の安孫子三和さんら実績のある現役の漫画家が、講師を務めているのが最大の特徴だ。
 約15人の少人数制。漫画を描くための基礎的な知識や技術の習得にとどまらず、16ページ以上の作品の創作や出版社への原稿の持ち込み方、出版社の編集者が来校して生徒の力を確かめる「出張編集部」など、プロになるための実践的なカリキュラムがある。
 「アットホームな雰囲気の中、プロになるため、一人一人の学生の能力に応じたきめ細かい指導をしている。近年の生徒は真面目でおとなしい傾向にあるが、内に秘めた情熱が感じられる。磨けば光る原石のような学生が多い」。指導歴が約30年のベテラン講師の漫画家ゆうみ・えこさん(仙台市宮城野区)は、こう話している。

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