厄介な外来魚、駆除へ一計 異色の釣り大会企画

鳥取県智頭町芦津周辺を流れる北股川で外来魚ブラウントラウトが増殖、在来種のイワナの生息数が減ってしまい、関係者を悩ませている。近年は電気ショッカーを使って駆除していたが、作業に当たる人員や移動範囲も限られ、駆除が追いつかずにいた。そこで、地元漁協は一計を案じた。釣り大会を企画し、釣り人の手を借りて厄介者を駆逐する作戦を立案。楽しいイベントを契機に生態系の回復に結び付けたい考えだ。 ■在来種に影響  同町によると、ブラウントラウトの原産地は欧州から西アジアにかけて。黄色い体に黒点があるのが特徴で、食欲が旺盛のため在来種を食べ尽くす。時には共食いをすることもあるほどだ。1892年に北米からニジマスの卵に混じって国内に入ったとされ、全国各地で確認されている。  1981年に同町芦津の三滝ダム上流で初確認された。なぜ鳥取県内に入り込んだのかは不明で、放流された可能性もあるという。 ダム上流から北股川にかけてはイワナの生息地だったが、ブラウントラウトは繁殖を続け生息地を拡大。町山村再生課の小西優磨主事は「本流はほぼブラウントラウトのすみかで、イワナはより上流か下流に追いやられた」と肩を落とす。

 町と千代川漁協は2015年度から、電気ショッカーを使った駆除を開始。毎年150匹以上が取れ、電気ショッカーによって気絶した魚のうち約6割がブラウントラウトだった。 ■人不足に奇策  一方で、駆除には課題もある。同漁協の組合員や役場職員、有志での参加者もいるが、人員は慢性的に不足。川の中での作業になるため、広範囲を網羅する駆除作戦は難しかった。  幅広い人の協力が必要と考えた同漁協は釣り大会の開催を町に提案。町は町観光協会にも協力を依頼し、7月1日から9月30日にかけて大会を開くことが決定した。参加条件は同漁協の組合員か、イワナなどの漁業権魚種を混獲する可能性があるため、本年度の遊漁証を購入した人とする。  漁法は釣りざおでの釣りに限定。捕れた魚は観光協会に持ち込むルールで、成績上位者には賞品も用意。全長が大きい大物賞と、持ち込み数が多い大漁賞の上位各2人に、食事券や来年度の遊漁証などを贈る。

■食イベントにも  同漁協は餌にならないようブラウントラウトがいない場所を狙いイワナを放流しているが、寺崎健一組合長は「イベントを通して、生態系が回復するよう期待している」と切望する。  また、同協会は釣りイベントを通じた町への来訪者増加という副産物も狙う。河村実則専務理事は「釣り人が来ることで町のにぎわいになる」と期待。ブラウントラウトは味も良いため参加者が持ち込んだ魚は、保存して食のイベントに使うことも検討している。

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