このところ原油価格が急落しています。原油価格は世界経済のバロメーターともいわれていますが、価格急落は今後の日本経済にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
リーマンショック直前の好景気の時期、原油価格は1バレルあたり140ドル台まで上昇していました。米国の好景気に加えて、新興国による需要の爆発的な増大から石油の枯渇が心配されたことが主な原因です。リーマンショック以降は、米国の景気がしばらく低迷したことから、原油価格は100ドル前後で安定して推移してきました。しかし最近になって原油価格が再び動き始めています。
7月には原油価格が100ドルを割り、10月には90ドル、11月には80ドルを割る水準まで下落しているのですが、市場関係者は当分の間、原油価格の低迷が続くと予想しています。その理由は、世界経済の減速と米国のシェールガス開発です。
米国では安価なシェールガスの開発が進んだことで、近い将来、必要なエネルギーをすべて自給できる見通しとなっています。サウジアラビアなど中東の産油国は、本来は価格が下落すれば減産で対応するのですが、今回は米国のシェールガスというライバルが存在します。そのため、世界経済が減速傾向であるにも関わらず、価格勝負に出ようとしており生産量を減らしていません。これが原油の価格低下に拍車をかけているのです。
原油は世界経済のバロメーターであり、本来であれば、価格低下は世界経済の停滞要因となります。しかし、今回は米国が産油国になるというこれまでにない事態となっており、以前とは状況が異なります。
米国は今のところ世界経済減速の影響を受けていないのですが、いずれは影響を受け、米国経済も足踏みするという見方が有力でした。しかし、米国では有り余る原油によってガソリン価格が大幅に下落しており、これが消費を刺激しそうな状況となっているのです。
10月の米国における新車販売台数は前年同月比6.1%増の128万1313台となり、10年ぶりの高水準を記録しました。特に大型車の販売が好調で、これはガソリン価格の低下が大きく影響しているといわれます。ガソリン価格の低下で米国の個人消費が拡大することになれば、米国は世界経済低迷の影響を受けずに済むかもしれません。
そうなってくると日本経済にとっては非常に追い風となります。トヨタなど、日本メーカーの多くが、米国に工場を持ち米国で製品を販売しているからです。また日本が輸入するエネルギーの価格も低下が見込まれるため、製品の価格競争力向上が期待できます。
日本の7~9月期における実質GDPはマイナス1.6%(年率換算)とかなり低迷していますが、原油価格の下落をうまく利用することができれば、GDPのかさ上げに貢献することができるでしょう。