原発事故で注目される「植物工場」

閉鎖した環境で人為的にコントロールして作物を育成する植物工場。東日本大震災以降、効率性のみならず、その「密閉性」が注目されている。放射性物質や土壌に作物がほとんど影響されないからだ。各地で取り組みが急増。津波で塩害にさらされた地域でも、導入が検討され始めた。(産経デジタル 野間健利)
 一面に青々とした豆苗が広がる。発芽野菜の大手、村上農園(広島市)が山梨県北杜市に建設した植物工場だ。
 工場内のレールを移動しながら、発芽から収穫まで機械化されて行われる。工場らしい光景の中、最大の特徴は「窓がない」ことだ。
 当初は窓をつける予定だったが、震災による東京電力福島第1原子力発電所の事故で放射性物質が懸念されたのを契機に、設計を変更。直接外気を取り入れない作りにした。
 気温の調節は工場内にめぐらされた温水パイプと、内壁を湿らせ気化する際に空気中の熱を奪う仕組みを利用したシステムで行う。太陽光は、強化プラスチック製の透明な天井から取り入れる。換気も放射性物質を通さないフィルターを通して行う。
 原発事故以降、各地の農作物から放射性物質が検出され、問題になっている。工場製品でも、埼玉県春日部市の工場で製造された粉ミルクから放射性セシウムが検出され、空気を介しての混入が原因とされた。
 植物工場のコンサルティングを請け負うフェアリープラントテクノロジー(京都市)によると、震災以降、植物工場建設の問い合わせが急増した。「前年と比べて3割増えた。東海や関東、北関東からの問い合わせが目立つ」(同社)と話す。
 津波で田畑が塩害に見舞われた被災地でも、土壌に影響されない植物工場に注目。仙台市では農地に植物工場や加工場を建設する構想も上がっている。

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