経済産業省の有識者会合「原子力小委員会」は8日、今後の原子力政策の方向性を示した行動指針案を大筋で了承した。廃炉を決めた原発を対象とした次世代原発へのリプレース(建て替え)推進と、実質的に60年超運転を可能とする新たな運転ルールが柱。脱炭素社会の実現と電力の安定供給の両立を理由に、原発活用に向けて原子力政策を大きく転換させる内容となる。 【現地の変貌】福島第1原発、廃炉なのに建設ラッシュ 行動指針案では、次世代原発について、将来の脱炭素化のけん引役と位置づけた上で「開発・建設を進めていく」と明記。廃炉を決めた原発の建て替えを優先する方向性を示す一方、新増設は各地の再稼働状況などを挙げて「今後の状況を踏まえて検討していく」との表現にとどめた。原発依存度を東日本大震災前より低減させる従来の方針は維持する。 運転期間を巡る新たなルールについては、「原則40年、1度だけ最長20年延長できる」との現行制度を残した上で、原子力規制委員会の安全審査などで停止した期間を運転期間に算入しないようにする。例えば停止期間が10年続いた場合、実質的に最大70年の運転が可能で、既存原発の「延命」につながる。 行動指針案は国のエネルギー政策を扱う「基本政策分科会」での議論を経て、政府の「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」で報告され、正式決定される見通し。【浅川大樹】