原子力規制委員会が31日、原発事故時の避難に備える重点区域を半径30キロ圏に拡大したことをめぐっては、その外側の自治体でも防災計画の策定を目指す動きが広がっている。東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)周辺では、半径50キロ圏にある仙台市や岩手県など複数が計画作りを始めた。福島第1原発事故による被害が、30キロ以上離れた地域にも及んだことが影響している。
女川原発の30キロ圏と50キロ圏の自治体は図の通り。30キロ圏はごく一部が対象となる美里町を含む宮城県内7市町、30キロ超~50キロ圏は宮城県内13市町村と一関市。30キロ圏内と宮城県は来年3月までに原子力災害に対応した地域防災計画の策定が必要。外側の自治体に義務はない。
30キロ超~50キロ圏で既に原子力災害対策を作る方針を決めたのは仙台、大崎両市と岩手県。河北新報社の取材では多賀城、塩釜両市と七ケ浜町も前向きに検討している。
仙台市は30日、具体的な協議を始めた。市民の避難計画や原発周辺の避難者受け入れ、被ばく対策などを検討し、来年3月末までに暫定計画をまとめる。奥山恵美子市長は「仙台は人口も訪問者も多い。事故時には難しい課題に対応しなければならない」と話す。
岩手県は県議会で策定を求める請願が採択された。総合防災室は「来年3月までにまとめ、計画内容を定期的に見直しながら、事故に備えたい」と語る。大崎市も来年3月を目標に、住民避難の基本方針などを盛り込んだ計画を打ち出す。
策定に前向きな多賀城市は「事故時の風向きなどで、影響を受ける可能性がある」(交通防災課)と指摘する。
利府町は「検討中だが、防災計画に原子力災害対応を入れることになるのではないか」、栗原市は「原子力災害への備えが必要との意見が庁内にある」などとしている。
国の原子力災害対策指針の議論では、50キロ圏を目安に「屋内退避や被ばく影響低減のため安定ヨウ素剤服用を考慮する」との案も出されたが、31日の段階では範囲を含め「今後検討すべき課題」と位置付けられた。