古米と逆転 新米安値異変 コメ余り、価格競争激化

コメ余りの中、全農が農家に支払う概算金を大幅に引き下げたこともあって、2010年産米は安値で始まった。もはや古米となった09年産より、新米の方が安く販売されるケースも出ている。思わぬ逆転現象に消費者は喜んでも、東北のコメ流通関係者や生産者からは嘆き声が聞こえてくる。
 「本当は反対ですよね。新米の方が安いなんて」。仙台市青葉区にあるスーパーのコメ売り場で、不思議そうに話したのは40代の主婦。
 目の前に並ぶコメの価格は宮城県産の新米ひとめぼれが10キロで3280円。対して09年の宮城県産ササニシキは3780円。銘柄は違うが、新米の方が安い。
 コメの販売価格は普通、新米の季節が一番高く、徐々に下がって、また新米が出回ると値を戻す。ところが今年は概算金が前年比で2~3割下がった産地が多く、その結果、09年産米価格をそのまま引き継ぐような安い水準で新米価格がスタートした。
 全農宮城県本部が新米の販売を開始した9月25日、仙台市泉区のスーパーには、宮城県産の新米ひとめぼれが10キロ2980円で並んだ。この価格は前日まで店頭に並んでいた09年の宮城県産ひとめぼれと全く同じ。25日から09年産の方は20%引きで販売した。
 コメ市況調査会社・米穀データバンクの高橋芳郎社長は「新米の卸値が急落したのに、09年産米の在庫は高値で仕入れたから、極端に下げるわけにいかない店もある」と解説する。
 古米になると卸価格が60キロで2000円程度下がるのが一般的。在庫を抱えた業者は損を覚悟で処分売りせざるを得ないから、09年産も夏ごろから大幅に下がってはいる。だが、コメの先安観が極端に強いことで価格競争が激化し、新米にも波及している。
 「コメ過剰でこれまでは考えられなかった特異現象が起きている」。全農宮城県本部の渋谷潤太郎副本部長は、販売価格の混乱を懸念する。
 生産者側の落胆も大きい。「新米がこのレベルのスタートでは、先行きが思いやられる。こんな値段で果たしてこの先、誰がコメを作っていくのだろうか」。4ヘクタール余りの水田でコメを作る大崎市古川の専業農家佐々木浩さん(49)のため息は深い。

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