可夢偉「勇気を与える力」で復興Vだ/F1

兵庫・尼崎のゴンタ(やんちゃ少年)が世界のトップレーサーに! F1世界選手権は7日、三重・鈴鹿サーキットで第15戦・日本GPが開幕する。フル参戦2年目の小林可夢偉(25)=ザウバー=は6日、自身2度目の母国GPを前に国際自動車連盟(FIA)の公式会見に出席。母国GP用に大幅な改良を施したマシンでの健闘を誓った。東日本大震災の被災者支援に力を入れる日本人唯一の正ドライバー。自らの走りで日本に元気を与える。
 秋晴れの鈴鹿に主役が帰ってきた。世界の数あるサーキットの中でも難関とされるコースで伝説の5台抜きを披露した母国GP初陣から1年。前後のウイングや車体の床部分に至る空力部品の改良を終え、可夢偉は「今季最後の大改良になる。母国のファンの大きな期待をいい方向に生かしたい」と力を込めた。
 チーム在籍2年目でエースに抜擢された今季。すでに7度の入賞(10位以内)を果たし、5月には伝統のモナコGPで自身最高位の5位と活躍。世界の注目を集め、7月には来季のチーム残留を決めた。
 今年は特別なモチベーションも加わった。開幕戦・豪州GP直前に東日本大震災が起き、各チームが車体に日の丸を掲げて出走する異例の幕開け。8歳だった1995年に阪神大震災を経験した可夢偉は好成績で被災者を励ましたいと決意した。今大会の決勝に福島県の少女合唱団「MJCアンサンブル」と家族ら60人を招待し、合唱団に決勝前の国歌斉唱を任せた。被災地を励ます一方、日本復興を世界にアピールする目的だ。
 可夢偉のことを「正義感のあるゴンタ」と呼ぶのは、可夢偉の少年時代を知る兵庫県尼崎市の三和本通商店街(通称カムイロード)・松本和夫専務理事(63)だ。小学生時代にいじめで同級生が登校拒否になると“仲介役”を務め、友人が登校するよう尽力。「人の上に立つ親分肌の子供だった」と松本さんはいう。
 今大会で、「我々の祈り、日本に届きますように。」の日本語メッセージを車体に掲げるザウバーは、さきに特別リリースを発表。可夢偉は「F1には日本に勇気を与えられる力がある。昨季大会の成績(決勝7位)を超えたい」と使命感も新た。世界の注目を集める戦いに、いざ出陣する。 (石原有記)

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