携帯電話やPHSとPDA(携帯情報端末)が合体した「スマートフォン」。その世界的メーカーのHTC(台湾)が、日本への攻勢を強めている。昨年4月に設立した日本法人「HTCニッポン」を率いるジェニファー・チャン社長は、「日本市場に受け入れられることで、HTCの端末は世界の標準になる」と意気込み、今後は新型端末を相次いで投入する方針。年内に国内スマートフォン市場のトップシェア奪取をめざす。(上野嘉之)
「日本のモバイル端末市場は世界の最先端。欧米やアジアではメールが中心だが、日本ではEコマース(電子商取引)が普及し、携帯でテレビを見ることもできる」
来日して1年余りのチャン社長は、日本の“携帯文化”をつぶさに観察し、製品に反映させる方策を練ってきた。
HTC本社から日本市場の開拓を託されたのは、ビジネスの経歴や堅実な手腕が認められたからだ。国立台湾大学で経営学修士(MBA)を取得後、銀行などで広報宣伝の責任者を経験した。さらに、台湾の通信事業会社ではインターネット接続事業を任されるなど、技術にも明るい。
これまで各国を転々と移り住んだチャン社長だが、日本は特にお気に入りで、「来日できたのはラッキー」という。
ただ、ビジネスの舞台としての日本は厳しい。日本のスマートフォン市場は、平成17年末にPHS事業者のウィルコムがシャープ製の高機能機種を投入して開拓。先月末に携帯電話事業に参入したイー・モバイルも同社製端末を武器にユーザー獲得を目指しており、競争激化は必至だ。
HTCは昨年7月にNTTドコモから機種をリリースし、ソフトバンクにも販路を広げて10万台以上を出荷したが、道半ばだ。
勝機は、女性ユーザーの獲得にあるとみる。チャン社長自身も愛用のスマートフォンで多忙なスケジュールを管理し、重要なメールをいつでもどこでもチェックしているヘビーユーザーだ。「ただ便利で役に立つだけでなく、心配事が減って心が自由になる。かけがえのないパートナー」という。
日本の携帯市場では、ユーザーがデザインを重視して端末を選ぶケースが多い。若い女性が携帯電話の購買動向や利用方法をリードする傾向もある。このためHTCは3月、スタイリッシュな白色の端末を追加。女子学生やOLに向けて販売を強化している。
チャン社長は「流行を引っ張る若い女性たちに、HTCのスマートフォンに触れてほしい」と呼びかけ、「大きさや形状が異なった、もっとカラフルでカジュアルな機種を発売したい」と“宣言”した。
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