吉村洋文大阪市長 慰安婦像めぐる朝日新聞の社説に反論「こっちのセリフ」

19日、大阪市長の吉村洋文氏が自身のTwitter上で、いわゆる「慰安婦像」をめぐる朝日新聞の社説に反論した。

ことの発端は、アメリカ・サンフランシスコ市議会が慰安婦像の受贈を可決したことにある。今月14日、市議会は、地元市民団体が設置した慰安婦像を公共物として受け入れる、と全会一致で可決した。

像の碑文には「旧日本軍によって数十万人の女性が性奴隷にされた」「ほとんどが捕らわれの身のまま亡くなった」といった表現があるという。吉村市長は議決に強い不快感を示し、サンフランシスコ市長に拒否権行使を求めたそうだ。決定が覆らないかぎり、大阪市とサンフランシスコ市の間にある姉妹都市提携を解消する意向だという。

19日付「朝日新聞」の社説は、「姉妹都市 市民交流を続けてこそ」と題して、これまでの経緯を説明。その上で姉妹都市提携の解消については「ちょっと待ってほしい。姉妹都市の関係のもとで育まれてきた交流は、双方の市民の歴史的財産である。市長の一存で断ち切ってよいものではない」と疑問視し、「慰安婦の総数や詳しい被害の実態は、これまでの研究でも定まっていない」と指摘しつつ、「国が違えば人々の考え方は違う。市民同士が息の長い交流を重ねることで、その違いを理解し、乗り越えていこうというのが、姉妹都市の精神のはずだ」と主張した。

その上で社説では、韓国・釜山市の日本総領事館前に慰安婦像が設置された一件で、安倍政権が駐韓大使の一時帰国措置を取った一件をあげ、「現実は何の成果も出ないまま、日韓交流の停滞だけが残った。強硬措置がもたらす副作用も肝に銘じておくべきだ」と苦言を呈している。

吉村市長はこの社説を掲載したネット記事を引用し、「『ちょっと待て』はこっちのセリフだよ、朝日新聞」と噛み付く。「吉田虚偽証言を何度も報道し、クマラスワミ報告に発展し、国際社会では朝日の虚偽報道が真実になってる。2014年になってやっと国内向けに訂正記事と謝罪」とこれまでの状況を振り返り、「僕を批判する前にやることあるでしょ」と訴えている。
吉村市長のいう「吉田虚偽証言」とは、朝日新聞がかつて掲載した文筆家の故吉田清治さんの証言とみられる。吉田さんは、日本の植民地だった朝鮮で戦争中「女性を慰安婦にするため暴力を使って無理やり連れ出した」と著書や集会で証言しており、同紙も取り上げていた。

1996年には、国際連合人権委員会に任命された特別報告者のラディカ・クマラスワミ氏が、吉田さんの証言を引用した「クマラスワミ報告」を提出し、慰安婦を「性奴隷」と位置付けた。

ところが2014年8月、朝日新聞は自社の検証記事において、「吉田証言」を取り上げた記事16本を取り消し、読者に対して謝罪している。吉村市長の「こっちのセリフ」発言には、こうした背景がある。

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