2011年は、本当にいろんなことがあった。日々の生活の中で、当たり前のことが当たり前にあること、それがどれだけすごいことなのかということにあらためて気づいたり、考えたりもした。
広告のコピーは、そんな当たり前の生活に彩りを添えてくれるもの、そんな気がする。
「スカッとさわやか コカ・コーラ」「そうだ 京都 行こう」「きれいなおねえさんは好きですか。」「hungry?」「バザールでござーる」「わんぱくでもいい たくましく育ってほしい」「ハエハエ、カカカ、キンチョール。」……
昭和と平成の名作コピーの数々を見るだけで、あぁこのCM超好きだったなぁとか、真似したなぁとか、これ買ったなぁとか、CM ソングやCMタレントの顔なんかも浮かんできたり、いろんなことが頭の中に浮かんでくる。コピーが、いろんなものを日常の中に運んできてくれていた。
毎年、数えきれないぐらいのコピーが生まれているわけではあるけれど、そんな中から名作とされる500本のコピーが紹介されているのが、『日本のコピーベスト500』(宣伝会議)という本。
10名の著名なコピーライター、CMプランナー、クリエイティブディレクターの選出による500本で、上位10本はランキング形式で紹介されている。ランダムにページを開くだけで、前記のような気分が味わえるとともに、頭の片隅にあった記憶も掘り返されてきて、「あれは入っているかな」なんて探してみたりもする。
数ある名コピーの中で第1位に選ばれたのは、西武百貨店の「おいしい生活。」だった。糸井重里さんの手によるもので、ウディ・アレンの顔のインパクトもなんだかすごかった。確かにその影響力とか分かりやすさとか、納得だ。
ベスト10作品は他にも3位のTOTO「おしりだって、洗ってほしい。」、4位サッポロビール「男は黙ってサッポロビール」、6位国際羊毛事務局「触ってごらん、ウールだよ。」、10位「すこし愛して、なが〜く愛して」などが選出されている。他にも、「ゴホン! といえば龍角散」「ミルキーはママの味」「金鳥の夏 日本の夏」「牛乳に相談だ。」「予想外。」「ガス・パッ・チョ!」などなど、誰もが知っている、「日常」に寄り添ってきた名作コピーてんこもり。そのいっぽうで、地域限定のCMなど、この本で初めて見るようなコピーも収録されていたりして、「隠れた名作」的発見もある。
各コピーには、企業名とともにコピーライターの名前も紹介されているが、印象としては、めくるたびに名前が出てくるような感じの、仲畑貴志、糸井重里、眞木準さんたちあたりの登場率に驚き、西武グループや、サントリー、JR東海あたりのCMが作り出してきた、その時代の空気がよみがえってくるような気もしたり。
歌は世につれ世は歌につれとはよく言われるが、広告コピーにもまた、世の中が映し出されている。もともと広告ってそういうものかもしれないが。
2012年にもまた、この500本に選ばれるようなコピー、いくつも誕生することかと思います。
(太田サトル)