名刺交換は仕事の基本、ベテランでも意外と知らない「正しい方法」

新入社員の中では、初めて自分の名刺を使うという人もいるだろう。「名刺交換はビジネスの基本」といわれるが、非常に重要なものである。特に営業では、そのときに「悪い印象」を持たれてしまうと、まず結果は期待できない。半面、好印象ならば、ライバルに一気に差をつけることができる。また、意外なことだが、ベテラン社員でもきちんととした名刺交換ができていない人が多いのだ。(営業サポート・コンサルティング代表取締役、営業コンサルタント 菊原智明)

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● 名刺交換をうまくやれば 他の人と「差別化」ができる

 「名刺交換はビジネス、営業活動の基本である」――。

 こう言って否定する人はいないだろう。新社会人になって初めに教えられるマナーの1つである。

 ただ、「名刺交換の正しい方法、効果的な方法を知っているか?」と、聞かれると急に自信がなくなる人も少なくない。「知っていそうであまり詳しく知らない」ビジネスマナーの1つであるといえよう。

 実は名刺交換のやり方ひとつで、他の人と一気に差をつけることが可能なのだ。

 むろん、結果を出している人、トップ営業マンと呼ばれるような人々はそのことを熟知している。

 名刺交換を軽視することなく、ここへ最大集中するのだ。

● 大学の授業では 名刺を指でつまんで渡す人も

 私は大学で“営業の授業”を行っている。その授業の1コマに名刺交換がある。実際に、学生に名刺交換をさせてみるのだが、その様子は実に面白い。

 そもそも名刺を持っている生徒が少ないため、名前を書くだけの簡易的な名刺を作成してもらうことから始まる。それをお互いに交換してもらう。

 中には、名刺の端を指でつまんで「はい」とぶっきらぼうに相手に渡す学生もいる。知らないのだから仕方がないのだが……。

 学生であれば《面白いなぁ》で済むかもしれない。しかし、これが社会人となった場合はどうだろう。

 ちょっと想像しただけでも《まあダメ社員だろうな》という印象を持つだろう。特に営業マンはお客様相手であり、ビジネスマンとしては最悪の評価となってしまうだろう。

● ベテラン営業でも 名刺交換がきちんとできていない人が多い

 自分では《名刺交換はしっかりできている》と、思う人は多いだろう。

 しかし、意外なことに結構なベテランの営業マンの方でも、胸ポケットから片手でつかみ、無造作に「どうも、こういうものです」と出す人も少なくない。

 もしかしたら、中身はいい人なのかもしれない。しかし、これではとても話を進めようとは思わない。

 こういった人は名刺交換で非常に損をしていることになる。

 初対面の印象は出会いの一瞬で決まる。よくビジネス書などでは“出会いは15秒で決まる”などと書いてある。

 私は15秒ではなくスタートの3秒程度で決まってしまうと考えている。

 あなたがお客様の立場になったときのことを考えてみてほしい。名刺交換をした瞬間に《この人はいい感じだ》もしくは《ダメだな》と判断している。そうではないだろうか?

 営業マンとしては《名刺交換など関係なく、トークで盛り返せばいい》と思っているかもしれない。しかし、名刺交換の時点で既にゲームオーバーなんてこともあるのだ。

 名刺交換のマナーを覚えると、意外にきちんと名刺交換ができない人が多いことに気付くようになる。

● 正しい名刺交換とは まず押さえたい5つのポイント

 では、改めて名刺交換について説明しよう。

 (1)名刺入れを使う

 (2)名刺入れに名刺をのせて両手で渡す

 (3)名前を名乗る

 (4)相手の名刺は名刺入れを下にして受け取る

 (5)名前の確認をする

 まずは、この5つのポイントだけ押さえてもらえばいい。

 社会人で名刺入れを使っていない人はいないと思うが、名刺入れの上にのせて両手で渡す人は案外少ない。

 たったこの1つのポイントだけでも《おっ!この人は感じがいい》という印象を与えられる。

 通常の名刺交換の際「○○会社の営業担当の菊原智明と申します」と名乗るだろう。それだけでもいいのだが、プラスαとして“名前の覚え方”を足してもいい。

 私は「菊原智明」という名前だがよく「菊地」「菊川」と間違われる。名乗った際「よく『菊地さん』『菊川さん』などとよく間違われます」と付け加える。

 そうすることで名前を覚えてもらえるようになる。

 相手の名刺を受け取る場合も名刺入れの上で受け取るといい。これだけでも丁寧な印象を与えられる。

 その際、名前を見て「○○さんとお読みすればよろしいでしょうか?」と聞いてみるといいだろう。

 初対面ではお互いの情報がないため、話がはずまない。

 この質問1つで「この名前は群馬県には多いんですよ」などと話が盛り上がることもある。また名前の読み間違えも防げるし、何倍も記憶に残るものだ。

● 名刺交換の後は 相手が思い出せるようにメモ

 さて、ここまで読んでいただいたあなたにもう1つやっていただきたいことがある。

 それはお客様やクライアントと別れた後、顔の特徴や趣味をメモしておくということ。後で名刺を見返した際、そのメモが重要な情報になる。

 たとえどんな情報だとしてもそれを糸口にして《あぁ、こういう人だった》と思い出すきっかけになるのだ。

 私自身も記憶力がいい方ではない。少し前に20人くらいの方と名刺交換させていただいた。

 その時は名刺に一切メモをしなかった。そして翌日、《せっかくだからお礼メールを送ろう》と名刺を1枚1枚見ていったのだが、名刺を見て思い出したのはたったの2人だけだった。

 あとの18人はどうしても思い出せない。

 最近は中性的な名前も多い。名刺を見て《男性か女性かさえも分からない》といった人もいた。人間の記憶なんてそんなものである。

 ということは、名刺交換した相手だって、こちらを忘れているのだ。

● 写真を載せるなど 自分を思い出してもらえる工夫をする

 あなたは自分の名刺について、相手が自分を思い出してもらえるような「工夫」をしているのだろうか?

 例えば、名刺に顔写真を入れる。

 これも思い出してもらうための立派な工夫である。顔写真が入っていれば高確率で《あっ、この人とはこんな話をした》と思い出す。会社の都合で顔写真が無理だとしても「こういった仕事をしています」といった一言を載せておいてもいい。

 とにかく名刺交換した相手のためにも“どこの誰か分からず、何をしているかも分からない”といった名刺を進化させてほしい。

 名刺交換を軽視している人は多い。そんな中、きちんと名刺交換できれば《この人は仕事ができそうだ》という印象を与えられる。

 さらに、その上で思い出してもらえる工夫をする。お客様との出会い、仕事関係の出会いは名刺交換から始まる。

 名刺交換でアドバンテージがとれれば、間違いなく、いい結果につながるものだ。

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