名湯で知られる温泉に異変、湯量減少で湯温が低下…含まれる成分も変化

岩木山麓の名湯として知られるだけ温泉(青森県弘前市)で、昨年末に突然、急激に湯量が減少して湯温が低下し、宿泊客や日帰り客が入浴できない状態となっている。年明けに国の観光需要喚起策「全国旅行支援」が再開され、温泉旅館関係者はコロナ禍で受けた経済的打撃を回復しようとしていたが、想定外の事態に頭を抱えている。

 嶽温泉旅館組合長で、「小島旅館」を営む小島庸平さんによると、異変が起きたのは昨年12月28日。小島旅館の浴槽のうち、熱い方の湯温が通常の43〜44度から40度以下に下がった。ぬるい方の浴槽は、41〜42度から体温並みの約36度にまで低下したという。

 嶽温泉には源泉が4本あり、それぞれの源泉をブレンドして各旅館に供給されている。小島さんが源泉を調べたところ、通常は80度程度ある1本が50度前後まで下がり、湯量も5分の1までに減っているのがわかった。さらに温泉に含まれる成分も変化し、赤茶色の浮遊物が混ざって各旅館の浴槽に流れ込むようになった。

 湯量減少や湯温低下の原因について、小島さんは「昨年8月の大雨をきっかけに、温泉をくみ上げる配管に何らかのトラブルが起きたのかもしれない」と推測する。源泉は温泉街から離れた麓にあり、通じる道路には1メートル以上雪が積もっているため、修理で重機などを搬入するのは容易ではない。小島さんは市に緊急の除雪を依頼すると、14日に作業が行われることになった。15日には配管の修理ができるめどが立ったという。

 今回のトラブルで、小島旅館は新規の予約受け付けを停止し、既に予約した客には事情を説明してキャンセルするか、そのまま宿泊するかを選んでもらっている。ほかの旅館も営業を一時取りやめるなど、大きな支障が出ている。

 嶽温泉も、長期化するコロナ禍で各旅館の収入が減っている。10日に再開された全国旅行支援などの旅行キャンペーンに期待をかけていただけに、小島さんは「事態は深刻で、物価高もあって温泉経営は窮地に陥っている。配管の修理が終わったら、一刻も早く営業を再開したい」と祈るように話す。

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