名物番組打ち切り相次ぐ 60歳以上の視聴者に価値を見いださないテレビ界

年間でもっとも入れ替わりの激しい4月の番組改編だが、今年はテレビ各局に激震が走った。“聖域”とも言われてきた大物司会者の番組の打ち切りが続々と決まったからだ。

 NHKは立川志の輔が司会の長寿番組『ガッテン!』、民放ではフジは『笑っていいとも!』の後番組として8年間続いた坂上忍の『バイキングMORE』、テレビ朝日系列の朝日放送では1995年から平日お昼の顔だった『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』が一斉に放送終了となった。

 この流れは昨年から始まっていて、日テレの『火曜サプライズ』、TBSの『噂の!東京マガジン』、フジの『とくダネ!』といった名物番組が地上波から姿を消したが、それがさらに加速したといえる。

 テレビ業界で何が起きているのか。メディアコンサルタントの境治氏はこう語る。

「各局は既存の視聴率での番組評価をやめ、新しい視聴率で判断するようになりました。これらの番組はいずれも新指標では評価されないと判断されて、打ち切りになったと見られます」

 基準になっている「新しい視聴率」とは何か。

 視聴率が導入されたのは1960年代。ビデオリサーチ社は「世帯に1台あるテレビでどれほど見られているか」という「世帯視聴率」の調査を開始した。これが長年、テレビ業界で「視聴率」として用いられてきた。

 一方で、世帯のうち、誰が観ているかまで調査した「個人視聴率」も大都市圏では算出されていたが、「世帯視聴率の半分以下の数字になるため、現場の士気も下がるし、対外的にイメージが悪いとテレビ局側が反発してきた」(キー局プロデューサー)経緯があり、今まで表に出ることは少なかった。

「高齢化が急激に進んだこともあり、視聴率は在宅率が高い高齢者がよく観る番組ほど高く出るようになっていました。テレビ局側も視聴率を上げるため、高齢者にも関心が持たれるような出演者や番組内容を心がけていました」(境氏)

 しかし、ここで大きな問題が発生する。

「若者層のテレビ離れを生んでしまったことで、購買意欲が高い彼らをターゲットにしたい企業からの広告が減ったのです」(同前)

 番組1本につき数百万、高い番組だと3000万円以上の制作費がかかるといわれるテレビ番組にとって、広告が入らなければ番組が続けられない。

 そこでテレビ局が新たな指標として導入したのが、個人視聴率をベースに、局ごとに独自の区分けをした「コア視聴率」だ。ビデオリサーチ社が2020年3月から個人視聴率を公表するようになり、それに基づいて各局はそれぞれのコア視聴率を算出している。

 いち早く指標を導入したのは全日(6~24時)、プライム(19~23時)、ゴールデン(19~22時)で11年連続視聴率3冠の日テレだ。

「日テレは1980年代からフジと視聴率争いをしていましたが、広告収入ではフジに大きく水をあけられていました。スポンサーがフジに若い視聴者がついていたことを見抜いていたからでしょう。13~49歳を『コアターゲット』と位置づけ、この層の視聴率を重視して番組制作をしています」(境氏)

 追随する形で他局もそれぞれコア層を設定しているが、いずれも50歳あるいは60歳未満が上限で、60歳以上は指標となる「コア層」からはじかれている。

 つまり、現在のテレビ局は、60歳以上の視聴者に価値を見いだしていないのだ。

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