季節の祭りやにぎわい創出のイベントなど、商店街が地域に果たす役割は大きい。一方、そうした行事は振興組合の手弁当で成り立っているケースも珍しくない。活動充実のため組合費だけに頼らない自前の「財布」を持とうと、収益事業で持続可能な運営を模索する組合が仙台市内で増えている。
(報道部・天艸央子)
●宮町商店街/スマホや電力契約仲介
青葉区の宮町商店街振興組合は昨年9月、インターネット光回線「お宮町光」や、格安スマートフォン「お宮町モバイル」用SIMカードの販売、さらに新電力契約取り次ぎを3本柱とする「地域生活改善事業」を立ち上げた。契約者の支払いの一部が収益になる一方、組合の取り分は最低限とし、料金を低く抑えた。事業を主導する阿部俊紀副理事長(53)は「住民と店の経費削減、商店街の収益アップ、何より商店街と住民のつながりづくりが目的」と話す。
近所に住む無職熊谷とし子さん(65)は昨年末、モバイル契約した。「分からないことは阿部さんに聞く。販売店より気軽に質問できる」と笑顔。人生初のスマホが今では手放せない。
光とモバイルは10件、新電力は30件の契約があった。阿部副理事長は「収益は防犯カメラの維持費など地域の暮らしに還元している。組合員以外の店舗や住民も気軽に相談してほしい」と呼び掛ける。
●荒町商店街/街が分かる土産物製作
若林区の荒町商店街振興組合は7月、街の歴史にちなんだ土産物「回文団扇(うちわ)」を製作。販売を希望する店にうちわを卸し、既に18万円の利益が出た。
きっかけは、子ども見守り活動の一環で昨年実施したハロウィーンイベント。19店舗が自腹で菓子を準備したが「毎回身銭を切っては大変。良い取り組みには資金が必要だ」と庄子康一副理事長(46)は語る。
うれしい出合いもあった。組合外の店舗52軒から協力が得られたほか、「実は加入したかった」と組合員数の増加にもつながっているという。
●市中心部8商店街/フラッグ広告 域内展開
中心部の8商店街でつくる活性化協議会事務局「まちくる仙台」は、路上や軒先のフラッグを広告媒体として販売する「ストリート広告」で収益を得る。
2011年の開始から好調で、今年は10月時点の売り上げは前年比2.5倍。食品や化粧品などの販促キャンペーンを中心に、月5、6件の予約が入る。
「中心部商店街の集客力は東北最大規模。高い広告効果が期待できる」と担当者の稲妻享さん(55)。収益は客引き行為禁止のキャンペーンや、商店街で実施するイベントなど、街の活性化に充てられる。