◎仙台Lサポーター、感慨深く/避難者熱い声援送る
サッカー女子、プレナスチャレンジリーグのベガルタ仙台レディース(仙台L)が28日、群馬県川場村でS世田谷を5-0で破り、リーグ制覇となでしこリーグ昇格を決めた。試合には、東京電力マリーゼ時代からのサポーターら約500人が駆け付け、喜びを分かち合った。
会場となった山あいの小さなサッカー場に、ベガルタゴールドのユニホーム姿のサポーターが集結した。時折大粒の雨が降る中、90分間大きな声援を送り続け、選手を鼓舞。優勝が決まると、ピッチに紙テープを投げ込み喜びを爆発させた。
仙台Lは、福島第1原発事故で活動を休止したなでしこリーグ「東京電力マリーゼ」が移管される形で2月に発足した。福島県富岡町の自宅が警戒区域内にあり、今は郡山市で避難生活を送る主婦三本木恵美子さん(57)は、マリーゼ時代からの熱烈なサポーター。「1年間、仙台Lの試合だけが楽しみだった。選手たちに『ありがとう』と言いたい」。今季全試合を観戦したとあって感慨深げだ。
2005年からマリーゼを応援してきた南相馬市の会社員桜真二さん(50)も「うれしくて涙が出た。みんな、本当にサッカーがうまくなったよ」と目を真っ赤にした。
J1仙台とかけ持ちで応援するサポーターにも、忘れられない一日に。前日のアウェー磐田戦から“連戦組”も少なくない。仙台市の会社員佐藤武志さん(58)は「この結果で、男子の選手たちも『やってやるぞ』という気持ちになるでしょう」と話した。
奥山恵美子仙台市長は「サポーター、仙台市民の皆さんと、この喜びを分かち合いたい。選手の多くが協力企業で働きながら練習を続けるという厳しい条件の下、さまざまな試練を乗り越えてきた姿は勇気と元気を与えてくれた」とたたえた。
◎WBC女子藤岡選手・凱旋試合飾る/大崎市民「やってくれた」
世界ボクシング評議会(WBC)女子ミニフライ級王者の藤岡奈穂子選手(37)が28日、出身地・大崎市古川で臨んだ2度目の防衛戦は、王者の震災復興を願う熱い闘志が、地元に勝利の歓喜をもたらす戦いとなった。初の世界戦開催を準備した市民は「復興の力になる」と最高のプレゼントを喜んだ。(9面に関連記事)
会場は被災に伴う復旧工事を終えた古川総合体育館。昨年5月、王座を獲得し、古里の支援を続けてきた藤岡選手にとって、念願の凱旋(がいせん)試合だった。
観客席では家族をはじめ、今大会の発起人の伊藤康志市長、母校の古川黎明中高(旧古川女高)の同窓生ら約1650人が見守った。息詰まる試合展開に声援が飛び、「藤岡」コールも広がった。判定勝ちが決まると、観客は喜びを爆発させた。
「すてきだった。自分も頑張らなければ」と興奮気味の女性客も。藤岡奈穂子後援会の竹中修悦会長は「やってくれた。市民の記憶に残る試合になった」とたたえ、父の一男さん(60)は「頑張った」とねぎらった。
試合後、リング上で被災地への思いを問われ、言葉を詰まらせた藤岡選手。最後は「一発一発を見てほしい、(被災地を)盛り上げたい、と思いを込めた」と笑顔を見せていた。
市民有志でつくる今大会実行委の千葉功実行委員長(大崎市体育協会長)は「素晴らしい試合で開催したかいがあった。復興の力になれば」と期待を込めた。
2012年10月29日月曜日