嗅覚の喪失、新型コロナ感染の兆候か 専門家らが指摘

【AFP=時事】子どものおむつのにおいが分からなくなった母親から、急に食べ物の味が分からなくなった議員まで、新型コロナウイルスの一部患者が嗅覚損失の症状を訴えている──。この症状が手掛かりとなり、ウイルスが検出できるようになる可能性があると専門家らが指摘している。

 英米仏の耳鼻咽喉科専門医らは、嗅覚が突然失われる無嗅覚症の患者がここ数週間で増えているとし、これが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の兆候の一つである可能性があると指摘している。こうした症状は、その他には何ら問題のない人にも現れるため、感染のサインとなり得るというのだ。

 世界保健機関(WHO)はCOVID-19の最も一般的な兆候として発熱、倦怠(けんたい)感、痰(たん)を伴わない空ぜきなどを挙げている。

 英国の耳鼻咽喉科の医師らはこのほど、嗅覚や味覚が急に失われた人について、たとえその他の症状がなくても自主隔離することを勧告するよう保健当局に要請した。

 英国鼻科学会(British Rhinological Society)のクレール・ホプキンス(Claire Hopkins)理事長は20日、英国耳鼻咽喉科医会(ENT UK)のニルマル・クマール(Nirmal Kumar)会長と共同でこの問題に関する公開書簡を発表し、COVID-19に関するイランやフランスからの第一報でも嗅覚の喪失を訴える患者についての記載があったが、これには特に驚かなかったとしている。

 ホプキンス理事長によると、突然に嗅覚が失われる成人の症例の約40%はウイルス感染後の無嗅覚症が原因とされ、このうち従来型コロナウイルスが関連している割合は最大で15%ほどと考えられているという。

 だが、新型コロナウイルスによる被害が最も大きいイタリア北部の病院に勤務する耳鼻咽喉科医師が、現場の医療従事者らの間に嗅覚喪失が多くみられると述べたことで状況が変わった。これがきっかけとなり、専門のインターネット掲示板に投稿が相次いで寄せられることとなったとホプキンス理事長は指摘し、「他には何ら問題のない若者らの間で、嗅覚喪失を訴えるケースが増えていることに皆が気づき始めた」と続けた。

 また、先週診察した患者20人のうち9人に、嗅覚能力の喪失が最近あったことが分かったとしながら、これが「極めて異常」な状況であるとも強調した。

■「重要なサインとなる症状」

 こうした状況を受け、無嗅覚症をCOVID-19の潜在的な兆候として複数の国の専門家らが注意喚起している。

  米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAOHNS)は22日、事例証拠ではあるが、無嗅覚症と味覚障害が新型コロナウイルスの「重要なサインとなる症状」であることを示す症例が増えていると指摘した。

 ドイツでは、地域的な流行で2月に約1000人が2週間隔離されたハインスベルク(Heinsberg)で住宅を戸別訪問する調査が実施され、この時に感染者全体の約3分の2が数日間の嗅覚と味覚の喪失を訴えていたことが分かった。

 調査を行った独ボン大学(University of Bonn)のウイルス学者のヘンドリック・シュトレーク(Hendrik Streeck)氏は、「中には、子どもの汚れたおむつのにおいが分からなくなっていた母親もいた。シャンプーのにおいがしなくなったという人や、食べ物が薄味に感じるようになったという人も」と、独日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(Frankfurter Allgemeine Zeitung)の取材で語っている。

 英国の政治家として初めて新型ウイルス検査で陽性と判定されたナディン・ドリーズ(Nadine Dorries)保健・社会福祉政務次官も、嗅覚と味覚の両方が失われたことを明らかにしている。

 ドリーズ氏は先週、ツイッター(Twitter)への投稿で、「食べ物や飲み物が温かいか冷たいか、これだけしかわからない」と書いていた。

【翻訳編集】AFPBB News

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