回らない「回転ずし」登場

手ごろな価格で人気を集めてきた回転ずしが変わりつつある。店内をぐるりと回るレーンをなくし、コース料理を出す店舗が登場。注文の品をレーンで届 ける方式や、食後にコーヒーも楽しめるカフェタイプが増えており、店舗網は郊外から都市部へとシフトし始めている。客層を家族連れから、都市部の女性、若 者にも広げるのが狙いだ。

スプーンで食べる一口大の寿司

午後7時の東京・赤坂。仕事帰りの女性が革張りのソファに腰掛け、ワイン片手にコース料理を楽しむ。出てきたのはすしのフルコース。スプーンで食べる一口大のすしや手巻き風すしが皿に並ぶ。

「これまで、おすしをあまり食べてこなかった人にも楽しんでほしい」

あきんどスシロー(大阪府吹田市)が今春開業した新業態店「ツマミグイ」に料理を運ぶ回転レーンはない。客1人当たりの売り上げは4千円程度と、同社が約 400店展開する回転ずし店の千円強を大きく上回る。現在は東京都内に3店だが「将来は大阪など他のエリアでも検討したい」と意気込む。

カッパ・クリエイト(横浜市)は9月、新業態の「鮨ノ場(すしのば)」の1号店を東京・青山にオープンした。注文を受けてからレーンで送り届ける方式で、 価格帯は従来店より上げた。女性やビジネスマンの客が多いという。同社は「郊外店舗は飽和状態。都市型店舗に力を入れる」と、4年後に新業態を100店舗 まで増やす考えだ。

回らない回転寿司

元気寿司(宇都宮市)には、従来の回転レーンと注文レーンを併用している店がある。こ うした店舗では7〜8割の客が注文レーンを使うという。同社は「握ったばかりの新鮮なすしを食べたい人が増えている」とみている。回転レーンでは売れ残っ て廃棄するものも多いという難点があった。5年後をめどに全店を「回らない店」にする方針だ。

すしにこだわらず多様なメニューを展開するのは、くらコーポレーション(堺市)。一昨年、メニューにコーヒーを加えると「客の少なかった午後2〜5時台に、カフェとして利用する女子高生の姿が目立つようになった」(同社広報)。豚丼やラーメン、カレーもメニューに並ぶ。

富士経済によると、平成26年の回転ずしの市場規模は5593億円。それまでの5年間で約1300億円増えた。だが伸びは鈍化傾向にあり、同社の予想では 27年は5777億円、28年は5881億円。回転ずし各社が安定成長を維持するには、店舗の新鮮さを保つアイデアが必須だ。

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