外食産業は味が命。そして店舗サービスの目新しさも欠かせない。これは外食産業の中でも好調の回転寿司業界にもあてはまる。最近は、独自のおいしさをアピールする新しいサービスや寿司ネタが、各地で続々と誕生している。
マーケティング会社の富士経済が発表した市場規模の推移によると、回転寿司業界は拡大の一途だ。年々鈍化傾向にあることは否めないものの、2008年に3,000億円半ばだった市場規模は、2012年には4,800億円を突破し、いまや5,000億円も目前となっている。
この活気ある市場を支える一因として、売上アップのためにさまざまなアイデアを次々に形にしていることが挙げられる。まずは店舗におけるシステムの刷新だ。常に握りたてを提供できるよう、注文方法はタッチパネルが当たり前となった。さらに、昨年夏に東京渋谷区にオープンした「魚べい渋谷道玄坂店 」「元気寿司渋谷店」(両店とも運営は元気寿司・本社:栃木県宇都宮市)にいたっては、タッチパネルで注文された品を運ぶ3段の高速レーンのみが設置され、回転レーンのない“回らない”回転寿司店舗だ。
一方、回転寿司における重要な要素としては、やはりネタに行き着く。ただし産地直送、獲れたて新鮮な魚介類では、すでにこのフレーズには慣れっことなった消費者にはインパクトに欠ける。そこで各店舗では知恵を巡らす。
さりげなく大胆な味を提供するのは、九州のチェーン店「回転寿司 魚蔵(うおくら)」と「回転寿司のある和食堂 魚蔵」(運営は魚蔵・本社:大分県大分市)だ。メニュー表には、マグロやエビといったおなじみのネタに混じって「抹茶アイス軍艦」や「バニラアイス軍艦」が載る。締めの一品として、デザート感覚で食べるには良さそうだ。価格は、両店舗で異なっており、前者は1皿2カンで105円、後者は2カン160円となっている。
また、沖縄へ出かける機会があれば、ぜひ立ち寄ってみたいのが「回転寿司 海來(みらい/沖縄県那覇市)」。那覇空港内にある同店では、沖縄を味で表現した創作寿司を堪能できる。たとえばピーナッツみそがトッピングされた一品は「ミミガー軍艦(320円)」。ほかにもみそと白髪ネギ島豆腐の「アゲアゲ島どうふ軍艦(190円)や「ゴーヤ巻き(250円)」など、ここでしか味わえないネタの寿司が勢ぞろいしている。むろんマグロやサーモンといった普通のネタも豊富だ。
メニューの多彩さとユニーク性が日々進化する回転寿司。市場の成長を支えるアイデア合戦はまだまだ続きそうだ。