固定と携帯で値下げ攻勢も「NTT離れ」に歯止めかかる兆しなし

「その場で『フレッツ光』に加入していただくと、パソコン本体は100円になります」――。家電量販店でよく見られたこんな光景も、今ではさほど驚かれなくなった。
「パソコン自体も数年前では考えられないほどの低価格化が進んでいますし、スマートフォンやタブレット端末の普及で自宅では据え置きのノートパソコンを持たない人が増えています。しかも、固定の光回線の料金は6000円前後します。これではとても新規契約は増えませんよ」(量販店の店員)
 その言葉通り、NTT「フレッツ光」の純増加入件数(新規契約から解約を差し引いた数)は、2012年4~6月期で前年同期比43%減の30万7000件。NTT東日本だけ見ると、7月の解約数は実に13万件と前年同月比で1.3倍に膨らんでいる。
 さらに競合するKDDIの値下げ攻勢も拍車をかけている。同社は3月から光回線とスマホをセットで契約した顧客に対し、スマホ料金を月額1480円割り引く「auスマートバリュー」を実施中だ。
 NTTも手をこまねいているばかりではない。
 9月1日から「フレッツ光」マンション向けサービスの月額基本料金を630円~840円下げ、2100円~2310円に、上限料金も4515円~5250円に割り引くことを決めた。
 顧客離れを食い止める値下げ攻勢は、NTTグループの稼ぎ頭であるドコモのスマホでも鮮明になってきた。
「10月から『Xi』(超高速通信LTE)の新料金プラン(Xiライト)を立ち上げ、現行より1000円安い月額4935円にする予定ですが、どの程度の効果があるかは疑問。なにせ、ソフトバンクやauの『iPhone』に押されて他社への“乗り換え”は今年度だけで31万3900件と止まる気配がありません。新型iPhoneの発売も逆風になるでしょうしね」(ITジャーナリスト)
 固定回線も携帯電話も他社にシェアを奪われる一方のNTTグループ。しかし、危機感が足りないとの声は多い。
 経済ジャーナリストの松崎隆司氏はいう。
「長らく通信行政の傘の下で回線事業を独占してきた自負もあり、いまだにNTT中心で業界が動いているという“天動説”がグループ全体に漂っています。しかし、かつてドコモが『iモード』で独り勝ちしたように、新しくて斬新なライフスタイルを消費者に提案しない限り、“NTT離れ”は止まらないと思います」

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