固定電話が怖い20代はこの心得を知っておこう 「固定電話恐怖症」に悩む若者のための処方箋

少し前にテレビで「固定電話が怖い新入社員」について特集されており、SNSなどでは多くの人が共感の声をあげていました。

正直に言えば、20代のときは私も「固定電話恐怖症」でした。新人時代、先輩から「電話を真っ先に取るもんだぞ」と教わり、ベルが鳴ると何をしていても誰よりも早く受話器を取る。まるで競技かるたのような世界にいました。

しかも当然、自分宛の電話はほぼゼロ。相手が誰かもよくわからないのに、一度簡単に用件を聞いて、先輩や上司に取り次ぐ。無駄だなあと思っていました。ただ、それから30年近く経った今でも固定電話は使われて続けています。

■会社に「固定電話」がなくならない理由

なぜ「固定電話」はなくならないのか? その理由は主に3つあります。

まずどんな会社にも「用事はあるが、担当が誰かわからない」というニーズのために代表電話という役割が固定電話にあるからです。小さな会社だと、それがフロアにあって、誰かが出なくてはいけません。また、社長や役員など、自分直通の電話をオープンにしてしまうと、トップアプローチしたい営業などからどんどんかかってきてしまいます。その露払いとしても固定電話が役立つわけです。

そして、最後はつまらない理由ですが、会社が経済的理由から社員に直通電話や携帯を持たせたくないために、共有の固定電話が置かれることもあります。

固定電話から新人宛の連絡がくることはほとんどないのに、なぜ彼ら彼女らが真っ先にそれを取らなくてはならないのか。それは社長や経営者や上司よりも、新人のほうが「人件費が安い」くらいの理由しかありません。固定電話に悩まされている若い人にとっては悲しい現実でしょう。

こうした理由があるために、会社から固定電話をなくすことはまず無理です。そうであれば、いっそのこと固定電話を「苦行」から「学びある修行」と再解釈してみるのはいかがでしょうか?

新人が固定電話から学べることは主に2つあります。

会社の代表電話や共通電話を取れば、社内の誰が、社外のどんな人とつながっているのかが明らかになります。よく名刺整理の仕事はつまらないように見えて、その人のネットワークや訪問先がわかり勉強になると言いますが、それと似た効果が得られるわけです。

電話を数多く取っていくうちに、どのお客さんが誰の担当なのか、そしてどんな仕事で、なぜ彼が担当しているのかなどがわかってきますし、それは自分が将来部署の中でどんなふうに仕事をしていけばいいのかを考えるうえでも役立ちます。

また、電話をかけてくる側の話し方や内容をよく聞くことで、ビジネス会話の練習になります。イメージは、リモートの英会話です。

おそらく新人の皆さんは会社に入ると謎の「オトナ語」に悩まされたのではないでしょうか。「朝イチ」「でき早」「アグリー」など、私も違和感を抱いているのですが(でも使っていますが)、ビジネスシーンで使われる言葉はちょっと変です。

日常で使われる言葉とは別物と思ったほうがいいでしょう。語学の基本はヒアリングとスピーキングなので、電話を取っていくうちに、ビジネス会話への理解が深まっていくメリットもあります。

■それでも固定電話が怖い場合は…

メリットがあれば少しでも頑張れるかと思い、少しこじつけ気味に挙げてみました。漫画家でイラストレーターのみうらじゅんさんも「なんでもプレイと思えば怖くない」とおっしゃっています。しかし、それでも怖いものは怖いという人もいるでしょう。

では、どうすればいいか。私の場合は、固定電話への苦痛を減らすために、英会話のカンニングペーパーのようなものをペラ1枚で作っていました。

「申し訳ございません。○○はただいま席を外しております。戻り次第折り返しさせますので、よろしければご連絡先を……」というようなありがちな言葉を全部書いて、半年ぐらいはそれを見ながら電話に出ていたのです。

カンペが見つかると恥ずかしいかもしれませんが、間違いなく固定電話への恐怖感を和らげる助けにはなります。どうしても固定電話を取るのが嫌で嫌で仕方がない人は、ぜひ試してみてください。

曽和 利光:人材研究所 社長

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