就職先が決まらないまま高校や大学を卒業した若者が、中小企業などで半年間実習する国の「新卒者就職応援プロジェクト」が、東北で成果を挙げている。実習の受け入れ窓口は各県の中小企業団体中央会や人材会社が担っており、窓口によっては実習生の半数がその後、正社員に採用された。長期の実務的な職場体験は求職者と企業の相性を見極める上で、双方にメリットとなっているようだ。
<半年じっくり>
実習は前半と後半の2期に分けて行われ、前半分は昨年4~7月にかけてスタートし、半年間の実習を終えた。宮城県中小企業団体中央会(仙台市)の場合、実習先としてIT関連など延べ80社が手を挙げ、新卒者69人が応募。面接を経て36人が実習に臨み、うち半数の18人が半年後に正社員で採用された。
採用を決めた参加企業の一つ、再生資源卸売業のサイコー(仙台市)は「当初は採用の予定はなかった。短時間の採用試験では分からない『人となり』が把握でき、採用に踏み切った」と話す。
週5日程度のペースで指導社員と組んで資源回収業務などに従事した実習を経て、同社に入社した男性(23)は「大卒時に職に就けず意気消沈していたが、実習で仕事を教わるうちに前向きになれた」と振り返る。
同中央会は「人材を確保したくても、学生の大手志向が壁になっている中小企業も多い。制度は双方が出会う機会になっている」とみる。
東北6県で受け入れ窓口を務める人材紹介会社ヒューレックス(仙台市)では、宮城県を中心に新卒者210人が100社を超す地元企業で実習。実習先とは異なる企業を含め、最終的にやはり半数近い102人が正社員となった。
人材派遣大手パソナ(東京)では東北分として28人が16社で実習し、うち7人が実習先に就職を決めた。
<離職減も期待>
中小企業庁によると、全国でこれまでに5000人が実習に臨み、正社員として就職した割合は30%を超えそうという。「実習生、企業の双方から好評。東北の窓口によっては半数が正社員になっているのは高い割合だ。実習後に入社することで離職率の低下も期待できる」(経営支援課)と話す。
実習の後半は昨年11月に開始。現在、ことし6月スタート分までの希望者を募集している。今春の卒業予定者はもちろん、卒業3年以内の既卒者まで対象を広げている。
中小企業庁は「正社員につながる道の一つ。募集枠が埋まれば締め切ることになるので、希望者は早めに応募してほしい」と呼び掛けている。
[新卒者就職応援プロジェクト]本年度の国の緊急経済対策の一つ。未就職の新卒者と受け入れ企業の希望が合えば半年間、実習が受けられる。実習先で技能や社会人マナーを学びながら、実習外の時間を使って別の企業への就職活動も可能。実習生は日額7000円、受け入れ側には実習生1人当たり日額3500円の助成金がそれぞれ支給される。連絡先は各県の中小企業団体中央会など。