仙台市の2012年度当初予算案は、東日本大震災からの早期復興という至上命令の下、活用できる国の事業と財源をかき集め、総会計で1兆1000億円を超える過去最大の規模で編成した。奥山恵美子市長は「仙台が復興の先頭を切る」と持続的な発展へ導く決意を強調した。1期目の任期の終盤は、その手腕が重く問われる。
一般会計は、地方交付税や国庫支出金、復興交付金といった国の支援に救われた側面が強い。市税収入が震災で細る中、依存財源が11年度当初比で905億円(49.1%)増え、自主財源の伸び率(18.3%)を上回ったことが裏付けている。
復興優先のため、市は既存事業を厳選、重点化したと説明する。地下鉄東西線の整備、子育て・就労支援プロジェクトといった奥山市長が重視する項目には手厚く予算配分したが、事業の廃止や凍結で大なたを振るったのかどうかは曖昧な印象を受けた。
一般会計の投資的経費は1397億円で、11年度当初の3.6倍に達する。市は行革の一環で05年度から職員を940人削減してきた。震災に伴う特殊ケースとはいえ、予算だけが一気に膨らんだ状況は、粗食に耐えてきた胃袋にステーキを詰め込むようなものだ。
経済分野をはじめ、復興事業でも施策の熟度や効果の吟味は十分なのか疑問が残る。12年度末の市債残高は前年同期比6.3%増の9378億円と過去最高となる。復興途上でも財政規律の維持は欠かせない。
懸念材料は、空前の予算を執行するマンパワーの不足だ。本格化する集団移転や被災宅地の復旧は、合意形成に向け業務量が膨らむ。市は16年ぶりに職員定数を138人増やし、臨時職員や他都市からの応援職員で乗り切る考えだが、綱渡りを強いられそうだ。
地元選出国会議員によると、永田町や霞が関では徐々に被災地を見る目が厳しくなってきたという。「復興バブル」とやゆされぬよう、部局や区の縦割りを超えた市役所組織の総力が試される。
その先頭に立つ奥山市長は、ことし夏で任期が残り1年を切る。次期市長選への態度が注視され始める中、被災者の生活再建を進め、東北復興の原動力にもなるという采配を迫られることになる。(解説=報道部・瀬川元章)