国内ではトヨタ「一人勝ち」 シェア5割目指す勢い

国内の新車市場でトヨタ自動車のシェアが目に見えて上昇している。業界の勝負所である1~3月の販売台数は、世界同時不況の影響で景気がどん底にあった2009年に比べて50・6%増の47万7303台に達した。
同時期の軽自動車を除く「登録車」シェアは48・9%と前年同期より4・3ポイント高まり、「2台に1台がトヨタ車」になった。1~3月といえばちょうどプリウスのリコール問題など、世界的にトヨタの品質問題に注目が集まった時期だが、プリウスの受注残の威力が大きく、補助金・減税効果も取り込んで販売実績で見る限り他社を圧倒する実績をあげたことになる。トヨタ以外のメーカーにとって、ホームグラウンドの「生存空間」はますます狭くなるようだ。
トヨタの高シェアには日産の苦戦も影響
「市場規模に体制を合わせることさえできれば、競争環境は相当有利になっている」
トヨタディーラーは生き残りに自信を示す。新車購入補助制度が2010年9月までに打ち切られるため先行きの不透明感は強いが、リーマンショックの痛手から立ち直るプロセスでシェアを高め、市場を制してきた実績がトヨタ陣営に自信を取り戻させている。インサイトやCR-Zで気を吐くホンダの伸びもトヨタには及ばなかった。
車種別では、2009年度に27万7485台とダントツの首位だったプリウスが1~3月に8万4860台を売り上げ、同時期のマツダと富士重工業の登録車全車種の合計分を上回る販売となった。かつてカローラが担った量販車の地位をプリウスが引き継いだ形で、プリウスだけで登録車シェアが17・ 8%にもなった。ほかにも小型車ヴィッツ、パッソ、カローラ、ミニバンのヴォクシー、ノア、ウィッシュ、エスティマ、セダンのマークX、クラウンとラインアップの厚みで他社を寄せ付けない。
トヨタの1~3月登録車シェアが48・9%という高さになった背景には、日産自動車の苦戦も影響している。同時期の日産の販売は前年比22・ 2%増で、トヨタの50・6%増、ホンダの41・3%増、マツダの40・0%増に対して低い伸びにとどまった。消費者をディーラーに吸い寄せるハイブリッド車がないうえ、量販が期待できる新型車に欠けたのが響いた。
新車は補助金終了する10月以降が正念場
トヨタは勢いのある他社の製品を標的に新商品をぶつける戦術で国内シェアを維持してきた。1990年代後半には40%回復に苦労したが、市場縮小で他社が販売網を整理したり、国内に適した専用車の開発から手を引いたのにともなってシェアは過去最高レベルに高まった。
2010年度は日産からジューク、マーチ、セレナ、エルグランド、フーガハイブリッド、EVのリーフと新商品投入が相次ぎ、挽回を図る一年になりそうだ。一方トヨタはプリウスの受注残が消え、新商品も「裏年」のため一気に登録車シェア50%超えとはいきそうもない。だが、新車市場は補助金が終了する10月以降に冷え込みに襲われるのが確実で、トヨタは限られたパイをとるために50%弱の確保に全力をあげると見られる。赤字や品質で叩かれたトヨタだが他社が牙城を崩すのは容易ではない。

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