大手旅行各社が、国内パックツアー商品で東北と九州に重点を置いたプランを相次いで発売している。昨年12月に全線開通した東北新幹線、今月12日に全線開通予定の九州新幹線で拡大する旅行需要の取り込みを狙う動きだ。若年層の旅行離れやネット系旅行会社の台頭などで大手の国内パックツアー部門は苦境に立たされてきたが、きめ細かなサービスと企画力で各社とも“復権”をもくろむ。
「4月の予約数は東北方面が前年同月比で5割、九州方面が7割増加。東北、九州両新幹線の開通効果は大きい」
大手旅行会社の幹部はそう語り、新幹線効果に驚きを隠せない様子だ。東北新幹線は5日に最新鋭のE5系「はやぶさ」が投入され、国内最速の時速300キロで走行。“鉄道のファーストクラス”ともいえるグランクラスが用意されるなど、大きな話題を呼んでいる。「長距離の鉄道移動が苦にならず、高齢者を含め新しい顧客層が開拓できる」(同)と期待は大きい。
日本旅行が4日に売り出すのが「旅の記憶~一期一会~」。東京、名古屋、大阪を出発地とし、青森、熊本・鹿児島などを目的地とする10プランを用意。いずれも添乗員が同行し、募集人員を20~30人程度に抑えたのが特徴だ。団塊世代の集まりや趣味の会など、小さなグループでの利用を想定している。ツアー内容もこだわりを重視。青森のツアーでは、不細工だけどかわいい“ブサかわ”犬として人気となった「わさお」と記念撮影でき、旅行代金の一部はわさおのえさ代に充てられるなど、動物好きの顧客も狙っている。
最大手のJTBも東北と九州を巡るツアーを発売。通常の料金に500円を追加するだけで、山形県でサクランボ狩りが楽しめたり、現地での移動にタクシーが使えるなどワンコインプランを各種用意し、お得感を演出している。
近畿日本ツーリストが売り出したのが、JR最北端の稚内駅(北海道)から最南端の西大山駅(鹿児島)までを列車移動する「日本縦断の旅」。東北、東海道、九州までの新幹線をフル活用するプランで、新青森駅から博多駅まではグリーン車を利用できる。車内での駅弁にも工夫を凝らし、産地の名産をそろえた。
各社とも久々に訪れた国内旅行拡大のチャンスに組織を挙げて取り組んでおり、今後もさまざまな旅行プランが商品化される見通しだ。(高山豊司)