政府は、行政データをオンラインで共有するため整備を進めている「政府クラウド」で、国家機密にあたるデータに限り日本企業のサービスを採用する方針を固めた。機密情報の海外流出を防ぐとともに、米巨大IT企業に先行された日本企業の技術開発を後押しする。2022年度に企業を選定し、23年度の運用開始を目指す。
3段階の機密性区分のうち、防衛装備や外交交渉の資料を含む最高レベルの「機密性3」や、漏えいすると国民の権利を侵害する恐れがある「機密性2」の一部などが対象になる見通し。政府は、NTTデータや富士通、NECのほか、新興企業の参画も念頭に置く。3月末までに必要とする要件や基準を定め、4月にも公募を始める。
専用回線などを通じて特定の団体などに利用者を限った「プライベートクラウド」の採用を想定している。初期費用や管理コストは割高だが、情報流出のリスクが低く、トラブル対応を迅速にできるのが特徴だ。
昨年10月に始まった政府クラウドの先行事業では、米アマゾン・ドット・コムの傘下企業と米グーグルが採用された。不特定多数が利用できるインターネットを通じてデータを共有する「パブリッククラウド」と呼ばれる方式で、世界的に広く使われている。低コストで使い勝手が良く、比較的機密性が高くない情報で利用されている。
政府は経済安全保障の観点から、機密性の高い情報の管理では日本企業のサービスを利用する必要があると判断した。プライベートクラウドであれば、日本企業でも米巨大ITと同等のサービスを提供できるとみている。
21年版の情報通信白書では、クラウドサービスの世界市場規模は20年の3281億ドル(約37兆円)から23年には5883億ドル(約68兆円)に拡大すると予想している。
◆政府クラウド=原則として全ての中央省庁と自治体が共同で行政データを利用できるようにするシステム。税金や児童手当の手続きなどで活用することを想定し、25年度までの整備完了を目指している。