国連、被爆地訪問促す決議案採択 中国初の反対票、激しい対日非難

■NPT会議に続き「歴史歪曲の道具」強調

【ニューヨーク=黒沢潤】国連総会第1委員会(軍縮)は2日、被爆地への訪問を世界の指 導者らに促す内容を盛り込んだ核兵器廃絶決議案を賛成多数で採択した。決議案は日本主導で提出されたもので、同様の決議採択は22年連続となる。中国は、 被爆地訪問の奨励と直接関連のない歴史問題に言及した上で、激しい対日非難を展開し、初めて反対票を投じた。

採決では156カ国が賛成し、中国、ロシア、北朝鮮が反対した。米国、英国、フランスなど17カ国は棄権に回った。

決議は「2015年は原爆が広島と長崎に投下されてから70年にあたる」とし、核兵器廃絶の重要性を強調。また、核兵器使用による影響への意識を高めるため、「破壊された都市への訪問」や「被爆者の証言」に耳を傾けることなどを世界の指導者や若者らに呼び掛けた。

昨年、ロシアとともに棄権だったものの、今回反対に回った中国の傅聡軍縮大使は決議採択に先立ち、日本を念頭に「人道の問題が歴史を歪曲(わいきょく)する道具に使われるのを見たくない」と強調した。

これに対し、日本側が「戦中の特定の事項に焦点を当てるのは建設的でない。国際社会が直面する共通の挑戦に立ち向かうため、中国と日本は未来志向の関係を 築くことが重要だ」と指摘すると、中国側は「広島と長崎の名を挙げて過去の事象を持ち出すのは日本自身だ」などと日本を激しく非難した。

被爆地訪問をめぐる表現は、全会一致が原則の核拡散防止条約(NPT)再検討会議(今年4~5月)の最終文書案にも一時盛り込まれたが、中国の反発で削除 された経緯がある。傅大使はこの際も、「(戦争加害者としての)歴史を歪曲し、第二次大戦の偏った解釈を押しつけようとしている」と批判していた。

日本政府は、被爆地訪問の奨励は歴史問題と無関係で「核兵器のない世界を実現する機運を盛り上げる上で大変重要」(岸田文雄外相)との立場。今回は賛成多数での採択だったため、中国の主張は反映されなかった。

◆英米仏は棄権に転じる

一方、棄権に回った英米仏は昨年、賛成票を投じていたため、今回、日本主導の決議案への態度は厳しいものとなった。英仏両国が態度を変えた理由について、外交筋は「人道(的な観点から廃絶すべきだと)の表現に問題があったようだ」と指摘した。

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