国連特別報告 メディアへの誤解が甚だしい

日本の現状をどこまで理解した上での報告なのか。甚だ疑問である。

ジュネーブの国連人権理事会で、「表現の自由」に関する特別報告者のデービッド・ケイ氏が、日本についての調査結果を報告した。

日本政府が、メディアに直接、間接に圧力をかけていると批判した。近く発表する報告書では、慰安婦の記述などを巡る教科書検定のあり方や、特定秘密保護法の見直しを勧告するという。

杜撰 ずさん 極まりない代物である。日本の一部の偏った市民運動家らに依拠した見解ではないか。

政府は、事前に公表された報告書案に対し、「客観的事実や分析に基づいていない」とする反論書を提出したが、ケイ氏は「結論に変更はない」と応じない。先に結論ありき、というほかない。

メディアに関しては、的外れの見方に終始している。総務相が放送局に対する行政処分の権限を有することを問題視し、政治的な公平性を求める放送法4条の見直しなどを勧告する見通しだ。

政府は、放送局の独自性を尊重し、穏当な対応をしてきた。4条違反を理由に電波停止などの命令が出された前例はない。

NHKと民放各社が第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)を設立し、番組に問題がある場合には、放送局への勧告などを公表している。

適正な番組作りを放送界の自主努力に委ねる。この流れが根付いていることは間違いない。

悪意に満ちているのは、教科書の慰安婦の扱いに関する見解だ。ほとんどの中学歴史教科書から慰安婦の記述がなくなったことを挙げ、政府の介入は市民の知る権利を損なわせると指摘した。

複雑な背景を持つ慰安婦問題を取り上げるか否かは、あくまで教科書会社の判断による。高校の歴史や公民の教科書の多くは、慰安婦問題を扱っている。

教科書検定では、日本軍が慰安婦を強制連行したとする記述があれば、修正を求められる。強制連行を示す資料は確認されていないことに照らせば、当然である。

国連人権理事会は、各国の理解と信頼を得る組織であるべきだ。米国のヘイリー国連大使も、「中国やキューバが理事国になって批判を逃れている上、非難決議には偏向もある」と不満を述べる。

報告書に強制力はないが、放置すれば、日本に対する誤解が国際社会に広がりかねない。

政府は、誤りに対して積極的に反論していかねばならない。

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