来日中の国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会のメンバーが4日、日本政府と企業の人権をめぐる義務や責任についての調査を終えたとして日本記者クラブで会見した。
【画像】「メジャーデビューしたからこそ」と被害を告白するジャニーズ元「忍者」メンバー
ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川氏(2019年死去)の性加害問題について被害を訴える元ジャニーズJr.や事務所関係者らから聞き取りをしたことを明らかにし、「政府が主な義務を担う主体として透明な捜査を確保し、謝罪であれ金銭的な補償であれ、被害者の実効的救済を確保する必要性」があることなどを示唆する声明を公表した。
会見に臨んだのは、先月24日から日本を公式訪問していた作業部会の議長のダミロラ・オラウィ氏と委員のピチャモン・イェオパントン氏。
声明では、喜多川氏の性加害問題をめぐっては、被害を告白する人たちとの面談で「ジャニーズ事務所のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」と記述。「日本のメディア企業は数十年にもわたり、この不祥事のもみ消しに加担したと伝えられている」とした。
さらに事務所の特別チームによる調査については「証言によると、透明性と正当性に疑問が残っている」と指摘。「あらゆるメディア・エンターテインメント企業が救済へのアクセスに便宜を図り、正当かつ透明な苦情処理メカニズムを確保するとともに、調査について明快かつ予測可能な時間軸を設けなければならない」とし、日本の全企業に対して、虐待に対処するよう強く促すと訴えた。
作業部会メンバーの日本訪問は、日本政府と企業がそれぞれ人権上の義務と責任を果たすためにどのような取り組みをしているかを調査するのが目的だった。
2人は東京や大阪、愛知、北海道、福島などを訪れ、省庁や地方自治体、市民団体、労働組合、人権活動家、企業、業界団体代表などと会談。企業による人権侵害を防ぐための国の法制化に向けた取り組みのほか、技能実習生を含む労働者全般の搾取の問題や救済の仕組みなどについて聞いた。
喜多川氏の性加害問題は、その中の一つという位置づけで、被害を訴える元Jr.やジャニーズ事務所などの関係者らから話を聞いたという。
作業部会は来年6月に人権理事会に報告書を提出する予定。(編集委員・大久保真紀)