国際ブランド・ランキング

日本企業のブランド力は、果たして世界でどの程度通用しているのだろうか?インターブランドが発表した「Best Global Btrands 2015」から、日本企業の実力を分析した。

トヨタはアジア系で最高位!世界で通用する日本ブランドはどこか

日本経済の成長が大きく見込めないなか、多くの日本企業は海外に活路を見出しており、売上高の半分以上が海外という会社も増えてきた。今後も安定的に成長していくためには、国内のみならず、国際的にも通用するブランド力をつける必要がある。

世界最大のブランドコンサルティング会社・インターブランドが発表した「Best Global Btrands 2015」から、グローバルで強いブランドはどこなのか、そしてその中での日本企業の立ち位置を分析してみたい。

同ランキングは、主要基盤地域以外での売上高比率が30%以上あることや、北米・欧州・アジア地域で相応のプレゼンスがあり、新興国も幅広くカバーしてい ること、ブランドの財務的評価をするために必要な財務諸表情報が公表されていることなどを基準に、対象企業を選定している。

ランキングの評価基準は3つ。①財務分析による、企業が生み出す利益の将来予測②利益のうち、ブランドの貢献度がどの程度か③ブランドによる利益の将来の確実性の評価—によって、ブランド価値を金額で算出し、ランキング化。ベスト100を発表した。

ベスト100の内訳は、米国企業が52と過半数を占める。次いでドイツが11、フランスが7、日本が6、英国が5、韓国が3と続く。上の図は、トップ10 を抜粋したものだ。アップルやグーグル、コカコーラなど、誰もが納得するであろう「最強のブランド」が並んでいる。トップ10中、唯一の日本企業は、6位 のトヨタ自動車。アジアのブランドでは最高の順位となった。そのほかのトップ100入りした日本企業は、ホンダ(19位)、キヤノン(40位)、日産自動 車(49位)、ソニー(58位)、パナソニック(65位)だった。

和田千弘・インターブランドジャパン代表取締役CEOによると、「日本 の自動車メーカーは、従来の“ものづくり”のレベルの高さに加え、新しいテクノロジーを積極的に採用したり、先進的なデザインや内装にするなどの革新によ る、信頼と安心のイメージが定着しました」と話す。

製品力だけではない。たとえば、新技術を積極的に開発する姿がテレビなどで報道されたり、テレビやWebのCMのみならず、現場の営業マンも、自社製品の強みを積極的に発信する体制が整っている。こうした各部署の連携によって、ブランドイメージ向上に成功しているのだ。

「日本の自動車メーカーは、顧客データの分析にも長けている。グレートデータと呼ばれる、高品質のビッグデータを活用できているのです」(和田CEO)。 ブランド価値金額を見ると、トヨタは16%、日産は19%と、いずれも2ケタの伸びだ。ホンダはタカタのエアバック問題で前年からの伸び率は6%にとど まったが、あれほどの問題が起きても、ブランド価値毀損には至らなかったとも言える。

任天堂はランク外に転落苦戦するソニー

トップ100のランク外に転落してしまったのは、任天堂だ。ほかにも、ピザハットやノキア、GAPなどのグローバル企業がランキングから姿を消した。任天 堂凋落の主因は、スマホゲームなどへの対応が遅れたからだろう。「ブランド向上のためには、人々の生活に適合するスピードが早いことが重要です。任天堂は ここが弱かったため、消費者の生活の中で、任天堂ブランドに接触する機会が大きく減ってしまったと分析しています」(和田CEO)。

ソニーの場合、前年比でブランド価値金額は5%減少した。ここ数年、減少傾向が続いており、「下げ幅は縮小してきましたが、まだ下げ止まっていない」(和田CEO)。

事業領域を再編成するなかで、どんなイメージをつくりたいのか、基軸が定まっていないように見えるのが、ソニーの弱点だ。同じく、カメラからBtoBビジ ネスに大きく舵を切りつつあるキヤノンも、前年比でブランド価値金額は4%減。ただでさえ、事業領域を変革する時期には、ブランドイメージが揺れるものな のだ。

ところが、ソニーのライバルであるパナソニックも、同じく事業領域を再編成してきたが、こちらは前年比でブランド価値金額は2%増。そんな難しい時期にも、微増とは言え、ブランド価値を高めたパナソニックの“勝因”は、いったいどこにあるのだろうか。

パナソニックに特徴的なのは、革新的イメージが根付いてきたことだ。たとえば三角形のロボット掃除機を出すなど、「新しいことをやる会社」と見られるようになってきた。

革新的イメージは、消費者にとどまらない。カーナビなど車載製品も同社の強みだが、こちらではメインの“お客”は自動車メーカー各社。こうした法人顧客か らも、新しいパナソニックを評価する機運が出てきているという。また、ブランド戦略専門の部署もつくり、ブランドを主軸に据えた意思決定をする体制を整え た。

マクドナルドはグローバルでは健在上場すればLINEも有力ブランドに浮上?

日本では期限切れ鶏肉問題をはじめ、 一連の不祥事でブランド力が地に落ちた感のあるマクドナルドだが、グローバルで見れば9位と健在。米国でも、健康に悪いと繰り返し喧伝されるなど、決して 追い風ばかりの環境ではない同社だが、「ファミリー層からの支持は、やはり根強い」(和田CEO)。

やはり不祥事でブランド価値金額を下げたフォルクスワーゲン(35位、金額は前年比で9%減)もそうだが、「強いブランドは、不祥事があったとしても、ブランド価値の毀損は比較的少ないものです」(和田CEO)。VWも、大転落はせず、回復していくと予想される。

ちなみに、不祥事があったからといって、ブランドを刷新するといった思い切った行動に出ることは、裏目に出るのだという。むしろ、原点回帰を強調した戦略を取ったブランドの方が、回復するのだ。

一方、急激にブランド価値金額を上げたのは、アマゾン(29%、順位は9位)、フェイスブック(54%、同23位)など。日本にも、フェイスブックのライ バルであるLINEがあるが、LINEは未上場で財務データが十分取れないため、対象企業から外されている。「もし上場すれば、ランクインする実力は十分 あると思いますよ」(和田CEO)。

良い製品やサービスを提供していれば、ブランド価値が上がるかというと、必ずしもそうではない。ブランド価値向上という点においては、グローバルでのトップ企業たちの行動に、まだまだ日本企業は学ぶべきところが多そうだ。

(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

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