東京電力福島第1原子力発電所の事故で放出され、森林に降り積もった放射性セシウムのほとんどが土壌の深さ10センチまでにとどまり、地下水を通じた周辺への流出は考えにくいとする研究成果を日本原子力研究開発機構の研究チームが30日までに発表した。
研究チームは「セシウムは土壌に沈着して動きにくいという従来の説が裏付けられた」としたうえで、「表土を5センチ程度削り取るという除染の手法は問題ない」と指摘している。
研究チームは2011年5月~13年7月、第1原発の南西約65キロにある茨城県内の森林で、落ち葉の層と土壌の深さ5センチ、同10センチの計3層の土と水分に含まれるセシウム134と同137の濃度を計測。濃度がどのように変化したかを調べた。
その結果、事故後に落ち葉に降り積もったセシウムの大部分は11年12月までに雨水により土壌の深さ0~5センチに浸透した。その後、土壌中での移動はごくわずかで、13年3月までに深さ10センチに到達したのは全体の0.3%程度だった。
調査期間中、深さ10センチまでのセシウム137の量は1平方メートル当たり約20キロベクレルとほぼ変わらず、周辺への流出はほとんどなかったと考えられるという。〔共同〕