土壌セシウム 放出低減 ゼオライト効果実証 東京農大

土壌改良資材に利用される天然鉱物ゼオライトが、農作物に放射性物質が吸収されるのを抑制する効果があるとの実験結果を、東京農大の後藤逸男教授(土壌学)らのグループが13日までにまとめた。ゼオライトは東北地方に無尽蔵に存在する鉱物。福島第1原発事故で放出された放射性物質による汚染の防止対策として期待されている。
 後藤教授らは山形県米沢市、福島県桑折町、北海道の鉱山で産出されたゼオライトをセシウム入りの水に混ぜ、ろ液に含まれるセシウムを調べて「捕捉率」を測定。さらに肥料にも含まれるアンモニウムを加えてセシウムが再び水に溶け出す「放出率」を調べた。
 その結果、ゼオライトによる捕捉率は99.8%以上、放出率は26~33%だった。比較のためゼオライトを含まない全国各地の土壌22点をサンプルに調べたところ、捕捉率94~99%、放出率48~99%で、捕捉率はゼオライト並みだが放出率は高く、ゼオライトが放出を抑える効果が確認されたという。
 農作物にセシウムが移行する度合いを調べるため、セシウム入りの土にゼオライトを10%の割合で加えチンゲンサイを栽培した結果、葉や茎に含まれるセシウムの量はゼオライトなしの場合の2%以下に減った。
 除染作業では一般的に地面の土を削り取る「表土除去」が有効とされている。しかし、水田や畑は事故後に耕してしまった場所も多く、こうした手法が難しい。
 後藤教授は「ゼオライトを用いてもセシウム自体はなくならないが、土の中に固着させられれば植物への移行は抑制できる。表面と深い場所の土を入れ替える場合、表面の土に混ぜて埋めるのも有効ではないか」と話す。
 実験に用いたのは非放射性のセシウム133。化学的性質は原発事故による汚染が問題になっている放射性のセシウム134、137と同じだとされる。
 後藤教授らの研究成果は学術誌「農業および園芸」(養賢堂)10月号に掲載された。
◎国産、高い吸着能力
 果樹園を抜け細い山道を上った先にある福島県桑折町の日東粉化工業(大阪)飯坂鉱山と工場。パワーショベルで山を崩す露天掘りでゼオライトを採掘している。
 やや緑がかった明るい灰色の石が見渡す限り転がる。「この山全部がゼオライト」と採石業務管理者の佐藤常義飯坂工場課長。採掘した石は大まかに破砕し、福島県二本松市の同社安達工場に運んで乾燥とサイズ分別をし、製品化する。
 ゼオライトは沸石と呼ばれる鉱物の総称。カリウムやナトリウムなどの陽イオンを吸着する能力の「塩基置換容量」が大きく、カリウムと似た性質のセシウムも吸着する。放射性物質は吸着されても放射線は出すが、水や土に混ざった状態より扱いやすくなる。
 業界団体のゼオライト工業会事務局を務めるジークライト(米沢市)の正野晶久執行役員によると福島第1原発事故直後に政府や日本原子力学会の関係者から協力要請があり、各地の鉱山は3月下旬から、原発の汚染水や車両洗浄水の浄化施設向けにゼオライトを供給している。生産量は世界で年間およそ300万トン。3分の2を中国が占める。国内産は15万トンにすぎないが、純度が高く陽イオンの吸着能力ではトップクラスという。
 土壌改良資材として知られ、牛の整腸剤としても使われる。原発事故後はジークライトにも非農家の個人客の問い合わせが殺到。1キロ当たり50円程度と手ごろな価格で、ホームセンターでの売り上げが大幅に増えた。
 その一方、汚染牛肉問題などで畜産向け需要は減少し、ゼオライト全体の売上高は苦戦が続いている。正野さんは「放射線対策の効果は専門家の検証を待ちたいが、除染技術の研究などに力を入れたい」と話す。

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