在外邦人も危惧。おめでたい「日本すごい」幻想を脱しないと手遅れになる

在外邦人から見たニッポンはビジネス的にアウト!?

 日本でのビジネスで成功を収める外国人がいる一方、海外で働く日本人も少なくない。日本社会を外から見るからこそわかる、日本経済の世界的評価を在外日本人に聞いた。

 香港で15年以上駐在員を続ける“そんぷ~”さんは語る。

「僕の知り合いの中国人女性は日本の大手広告代理店で働いていますが、『入社5年目の私よりも、新卒で上海のIT企業に入社した妹のほうが給料が高い。何のために日本語を勉強したんだろう』ってボヤいていました」

 日本への留学や就職は、以前ほどの価値がなくなっており、東大や京大ですら、中国人エリートにとっては北京大学の“滑り止め”という位置づけだ。

 上海駐在5年になる小島寛さん(仮名)も同様な意見だ。

「本当に優秀な富裕層の子弟はそもそも日本の大学ではなくアメリカに行きます。日本の大学や語学学校に来るのはもはやアメリカに行かせる余裕もなく、かといって中国の最難関に受かるのも厳しい層か、あるいは純粋にアニメとか日本文化が好きな若者でしょう」

 日本への外国人観光客数は過去最高を記録しているが、それも単純に喜べる話ではない。

日本には「安いから」行く

「彼らが日本に来る最大の理由は、“安いから”。ホテルもレストランも、先進国のなかでは抜群にコスパがいいんです」(そんぷ~さん)

 一方、安上がりすぎて富裕層向けビジネスは立ち遅れている。

「最高級ホテルを比較したら、日本はタイやシンガポールにも劣ります。カネに糸目をつけない人たちからすると小粒で物足りないのです。今後日本で新たな観光客向けサービスを展開するならコスパよりラグジュアリー感を意識すべき」(同)

 まだ少し残っているかのような「爆買い」も、かつてのように「良質な日本製品をたくさん購入」から、「本国で買うより安いから大量に買っていく」フェイズに移っているのが現実なのだ。

「日本製品=高品質」は過去の勲章

 15年前から中国・華南地方でコンサルティング業を営むTさんは、日本製品の価値が低下していると指摘する。

「日本の家電に憧れがあるのは’50~’70年代生まれまで。現在の白物家電は中国製の3倍の値段で低機能、特にIоTへの対応が遅れているので、日本製品=高品質というイメージは、10~20代の中国人の間ではそれほど強くありません。それなのにいまだに『日本の高品質な電化製品を爆買いしに来る中国人』といった意識でいる日本人が多いのは驚きます」

 実際、コンピューターやスマートフォンなどの分野では日本製品はもはや見る陰もないのは周知の事実で、白物家電もシャープは鴻海に、東芝も美的に買収されており、もはや「日本製品」とは言えなくなっているのが現状だ。

「経済的に日本のほうが格上だ」というおめでたい思い込みをアップデートしていかないと、経済はどんどん取り残され、過去の栄光と勘違いだらけの「クール・ジャパン」という不毛な夢想の中で徐々に沈んでいくのは間違いない。

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