地元企業が協力 オール福島で放射線測定器を開発

 放射能汚染に苦しむ福島県で、地元企業が協力して放射線測定器「ガイガーFUKUSHIMA」を開発した。必要な部品の調達から組立・製造、販売まで、かかわっているのは全て県内の企業やNPO。インターネットを通した販売が始まったばかりだが、使いやすさと2万円を切る低価格によって、既に約3000個の注文を受けているという。
 開発チームのリーダーになったのは、板金加工や照明機器を手掛ける三和製作所(福島県大玉村)社長の斎藤雄一郎さん(44)。
 「これまでの測定器は原発で働く作業員のために開発されていて、一般の人には使い勝手が悪い。住民が日常使いやすいものを目指した」と開発の理由を話す。
 原発事故後、斎藤さんは放射線測定器の入手に困ったという。インターネットで購入しようとしたが、さまざまな方式の機器が混在し、販売数も少なかった。結局、ロシア製を買ったが、7万円を超えてしまった。
 「安い物は性能が悪く、良い物は高すぎる」と言う斎藤さんは「福島県の人がしっかりした物を、それなりの価格で手に入れられないのはおかしい」と自主開発に乗り出した。
 斎藤さんの会社でまず試作し、6月からは友人らの協力を得て飯舘村などで実際に測定し、精度を高めていった。
 完成したガイガーFUKUSHIMAは1万8800円。スマートフォンに接続できる簡易型の測定器(9800円)と合わせ2機種を販売している。
 いずれも内部に気体を詰めて測定するガイガー・ミュラー(GM)計数管と呼ばれるタイプ。金型やケースは県内十数社が技術を持ち寄り、製品化にこぎつけた。測定器の表面には「オール福島の証し」(斎藤さん)として県の形のロゴマークを入れた。
 測定に使用する気体の製造が難しく、計数管の本体部分は当面、ロシア製を活用する。だが、除染ボランティアに来ていた高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)の研究員の協力によって、県内での本体部分の開発にもめどが立った。
 すべて自前でGM計数管製作の見通しが立ったことから、食品に含まれる放射性物質を対象にした個人用測定器の開発も検討されているという。
 ガイガーFUKUSHIMAなどは、NPO「営業支援隊」(郡山市)のウェブサイトで購入することができる。

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