過疎地などに移住して活性化を担う地域おこし協力隊制度で、2週間~3カ月間、業務を体験できるインターンが東北で広がりつつある。参加者に移住後の具体的なイメージを持ってもらうことで、協力隊員と受け入れ側のミスマッチを防ぐ効果が期待できる。自治体がインターンを多数受け入れて関係人口の増加に結び付ける動きもある。(山形総局・小田島悠介)
[地域おこし協力隊]自治体から委嘱を受け、任期1~3年で地場産品の開発や農林水産業などに従事する。2009年度に始まり、22年度は1118自治体で6447人(うち東北は1111人)が活動した。総務省は26年度までに年間1万人に伸ばす目標を掲げる。19年度から主に2泊3日の「おためし制度」を設けたが、住民との交流は限られるという見方もある。
「地域を好きになってもらうのが最優先」
「おいしい商品を作りましょう」。5月16日、山形県米沢市地域おこし協力隊員として前日着任したばかりの杉本菜々子さん(24)=川崎市出身=は早速、山形県産の果物を使ったスイーツの開発に向けた打ち合わせに臨んだ。
市内の観光地域づくり法人(DMO)で事務局を担う。活動をスムーズに始められたのは、昨年11月にインターンで2週間滞在した経験が大きいという。
本業はイラストレーター。滞在中は神社や温泉街といった観光地、伝統工芸の工房など約20カ所を現役隊員と一緒に巡り、地域をPRするイラスト作りに励んだ。その過程で住民との結び付きが強まった。
杉本さんは「昨年来ていなければ、ここにいない。人の温かさを感じて移住を決めた」と振り返る。市の相田隆行副主幹もインターン制度を前向きに捉える。「行政側や住民が移住希望者の人柄を早く知ることができ、三方良しの状況が望める」と言う。
総務省は2021年度、移住を決める前に業務や生活を体験してもらい、ミスマッチによる任期途中の退任を減らそうと、最大で1日1万2000円を補助する制度を創設。全国の参加者は同年度に106人、22年度に421人と増えた。
東北では21年度、石巻市と岩手県大槌町、福島県南会津町で計8人、22年度は6県13市町村で計約90人を受け入れた。
福島県川俣町では以前、隊員が勤務先の受け入れ企業になじめずに離職した例があり、22年度からインターン制度を取り入れた。町の担当者は「一定期間滞在するため表面上でない付き合いができ、就業先の環境を把握しやすい」と意義を強調する。
山形県西川町はインターンの目的を広く捉え、関係人口の拡大につなげようと模索する。今年1~3月、民家の雪かきを手伝いながら雪像作りなどを体験できる内容で募り、東北最多の42人を2週間ずつ受け入れた。担当者は「着任に先立ち、地域を好きになってもらうのが最優先」との姿勢だ。
自治体はインターンに対応する職員の確保に加え、宿泊場所や移動手段を課題に挙げる。22年度に2人を受け入れた岩手県野田村の広内鉄也総括主査は「参加者の運転免許の有無などを踏まえて活動しやすい環境を整えたい」と語る。