宮城県加美町地域おこし協力隊の3年間の任期を終えた岸田紗季さん(25)が1日、町内でコメと野菜の農家として第一歩を踏み出した。「不安しかないけど、何とかなるでしょう」。持ち前のチャレンジ精神で挑む。
神戸市出身。東北大農学部で学び、東日本大震災で被害を受けた農地の再生支援にも加わった。水田の土壌データ分析を専攻したが「研究室にこもっているより、体を動かす方が性に合う」。農家の暮らしを一から学ぼうと、卒業後すぐに同町の協力隊員になった。
小野田地区の上区城内営農組合(約50戸)で農作業を手伝いながら、知識と技術を吸収した。農産物の生産工程に関する認証制度「GAP(ギャップ)」の審査員を目指し、さまざまな講習も積極的に受けた。
農家1年目は、借り受けた畑50アールと田50アールで生産を始める。カボチャ、レタス、ズッキーニなどの野菜を栽培し、アイガモ農法の稲作にも挑戦する予定だ。
指導した今野重幸組合長(59)は「初めは方言や雪の多さに苦労したと思うが、真面目に一生懸命取り組み、今ではいろんな年代の知り合いが増えた。地域をけん引する存在になってもらいたい」と期待を寄せる。
「時間がのんびり流れている気がする」と住み心地の良さを口にする岸田さん。「10年後、20年後、自分のような研修生を受け入れられるようになりたい」と迷いなく目標を語った。